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悦楽にて成仏して頂きます
第2章 祈祷師
「はい……」
言いながらインターフォンに出ると、画面には祈祷師の姿。
「ちょっと、待ってて」
私はシワになったベッドシーツを隠すように、足元の方にあるケットを掛けた。セックスをしていた生々しい跡を見られるのは、相手が誰でもやはり恥ずかしい。
「はい」
玄関を開けると、大きめのバッグを持った祈祷師が入ってくる。
彼は、神明響揮(じんみょうひびき)。現在25歳だと聞いている。最初に名刺は貰ったが、本名だか通り名なのかも解らない。
ネットで名前を調べてみると有名な祈祷師らしく、半年先まで除霊などの予約で埋まっていた。
個人的なブログにも当たり、響揮に祈祷して貰ってから霊障(れいしょう)がなくなったと書いている物も見つけたし。
確かに、凄い祈祷師なのかもしれない。
「オツカレー。暴走しそうで、大変だったなあ」
「しそうじゃなくて、したのっ!」
私が短刀を使うのは、暴走を止める為。
細見の体でボタンを2つ開けたシャツに、翡翠の付いたネックレス。ジーンズには、ダメージ加工が施してある。髪は艶のある黒で、無造作風のセット。150センチの私より、30センチ以上は背が高い。
顔は整っていて、目尻が少し上がった大きな二重の目が印象的。鼻筋も通っていて、口は少し大きめ。両耳には、数えるのが面倒なほどのシルバーのピアス。
こんな響揮を見て、誰も凄い祈祷師だと思わないだろう。ホストと言われた方が、すぐに納得出来る。
ホストクラブに行った事は無く、テレビで観ただけだが。
響揮が、落ちたままの短刀を拾い上げて握り締めた。軽く目閉じてから、すぐに開ける。
「短刀とか、3回は使ったろ? 大分霊力が弱くなってきてるぞ」
手にした短刀を、彼が持って来たバッグに入れた。
「コレじゃ、次は成仏させられねえかもな。新しいの、持って来たぞ」
「ありがとう」
響揮は勝手にベッドに座りバッグも載せると、その中から出した小箱を軽く投げてきた。