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悦楽にて成仏して頂きます
第13章 陰陽師
「オレは10秒ほどなら、別の術で桜火を止められる。それを繰り返してる間に、お前は力を溜めるんだ。それを一気に、桜火へ放つ」
「そしたら、桜火が成仏出来るの?」
「いや……」
響揮は、また溜息をついた。
「消える」
「消えるって……?」
「成仏は出来ねえ。桜火は、消滅する……」
響揮は、苦しそうな表情。
私は今まで、セックスで霊を成仏させてきた。成仏した霊はみんな行き先が解り、その場所へと向かうのだろう。
「私が成仏させた霊達は、行き先が解ったって、消えていくの。行き先って、どこなの?」
「霊は天界で、泡みたいになって、転生を待つ。数日か、数百年か。眠ってる状態らしい。オレも、聞かされた話だけどな」
私にとっては、嘘のような話ばかり。
「じゃあ、桜火が消滅するって、どういう意味?」
「完全に消える。天界へは、行けねえ……」
響揮は、拳を握り締めている。
「他の方法で、成仏させられないの?」
軽く首を振った響揮の拳は、微かに震えていた。
「死んだ陰陽師が天界へ行くには、すぐに成仏の経を読まきゃならねえ。元々能力の強い桜火は、長く霊でいすぎた。だから、力を増した。もう、間に合わねえ……」
それは、他に方法が無いという意味だろう。
一見憎しみ合っているように見えるが、響揮は桜火が強いと認めている。浮遊霊などにもなって欲しくないと言っていたし、生きていれば、社を譲ってもいいような事も言っていた。
「うん……。解っ、た……」
桜火を消滅させる。
それは、完全に殺すのと同じ。でも他に方法が無いのなら、響揮と力を合わせてやるしかない。
それが、桜火の為なら……。
「敵だと……。思うしか、ねえんだよっ!」
叫ぶように言って、響揮は拳でテーブルを叩く。
響揮もつらいのだろう。でも、他に選択肢は無い。
2ヶ月以内にやってくる、永遠の別れ。
ふと思い出したのは、注入の儀の事。
力を目覚めさせ術が使えるようになったのは、私も陰陽師になったのだろう。
霊が見えていただけの私が、響揮に出会いセックス除霊という力を手に入れた。
そして、今は陰陽師。
響揮と桜火の為に、戦うしかない運命。
それを顔には出さず、「おやすみ」と言って自分の部屋へ戻った。