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悦楽にて成仏して頂きます
第13章 陰陽師
シャワーを浴びて部屋着でリビングへ行くと、響揮はソファーに座って落ち着かない様子。
「何だよ、話って」
すぐに響揮が言ってくる。
その時、玄関ドアが開いた。入ってきたのは、大きな袋を持った琴音。
「只今戻りました。お帰りだったのですね」
見ると、ビニール袋は2つある。それを持ってキッチンへ行く。
「オレの部屋、行こうぜ」
「いいの?」
私は琴音をチラリと見た。
「楓と、修行の打ち合わせがあるから。部屋には来るなよ」
「はい。解りました」
冷蔵庫の水を取ってから響揮の部屋へ行き、勧められたソファーに座った。
「何だよ」
「前に見た桜火のファンサイトで、桜火は陰陽師の子孫だって書いてあった。本当なの?」
響揮が黙っている間に、私は水を一口飲む。
「全部、知りてえんだよな……」
ゆっくりと、頷いた。
「安倍晴明(あべのせいめい)って人? 実在したの?」
映画やドラマなどで観た。色々な術を使って敵を倒すのは、確かに響揮達と似ている。でも安倍晴明自体、実在しないと思っていた。
「そいつは関係ねえ。実在したのかも知らねえ。オレ達の血筋は、卑弥呼(ひみこ)のものだ」
「卑弥呼……」
さすがにその名前は知っている。歴史で習ったくらいで、詳しくはないが。
「約1800前の卑弥呼は、陰陽師だった……。それから俺達は、ずっとその血を守り続けてる。出来るだけ能力のある者と子孫を残して。だから当時より、力は強くなってる」
「陰陽師って、本当だったんだ……」
「訊かれない限り、黙って呪文を教えるつもりだったけどな」
「呪文?」
響揮は頷くだけ。
この時代に、陰陽師などという者が本当にいたなんて。
陰陽師自体、作り物だと思っていた。信じられないが、響揮や桜火の術を見ると本当なのだろう。響揮は、嘘をつくのが下手だ。
「臨(りん)、兵(ぴょう)、闘(とう)、者(しゃ)、皆(かい)、陣(じん)、列(れつ)、在(ざい)、前(ぜん)。最強の術を出す呪文だ。覚えとけ」
「ちょっと待って」
私は、響揮にメモを借りた。もう1度ゆっくり言ってもらい、平仮名で書いていく。
「力を溜めてからじゃねえと、術は出せねえけどな」
言いながら響揮は、溜息をついている。