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悦楽にて成仏して頂きます
第13章 陰陽師
メモを受け取った響揮に着いて行くと、琴音を遠ざけ、またキッチンのシンクで燃やしている。最初の時はどうしてそこまで、という気持ちが大きくて気付かなかったが、響揮は小声で経を唱えていた。
「あいつの持ち物を置いとくと、部屋の気が悪くなる」
響揮はリビングへ向かう。
私は追いかけ、「霊の持ち物だから?」と小声で訊いた。
「ああ」
響揮はすぐにリビングで、結界を張り直している。
琥珀も落ち着いたのか、ソファーに座って毛づくろいの真っ最中。
「念の為にな。また、部屋に来い」
琴音の視線があるからと、2人でまた響輝の部屋へ行く。
「注入の儀について、桜火は知ってたの。水の能力の事も……」
「急がねえと、いけねえな……」
響揮は、これから私の儀式に行くと言い出した。
本当は、ゆっくり琴音の朝食を食べたい。でも、そんな場合ではないだろう。響揮と桜火の為、私は戦う決心をした。それならば、早く儀式を重ねなければ。
荷物をリュックに詰めると、当然のように琥珀が入り込む。
「はいはい。私は、琥珀の運搬係ね」
行きは響揮が裳の入った箱を持ってくれた。それでも、琥珀入りのリュックは重い。
また同じ儀式を済ませた帰り際、祈祷を続けるという響揮を覗き込んだ。
「ねぇ。私担当の、溜ってる霊はいないの?」
「いるっちゃ、いるけど……」
「すぐに送って。今日、成仏させるから」
響揮が、驚いた表情を見せる。
「お前、昨日もヤったろ?」
「昼間は除霊で、夜は儀式をする。毎日」
「お前がいいなら、構わねえけど……」
確かに疲れてはいた。でも、成仏出来ないままの霊を、そのままにして置きたくはなかった。
「家事は、全部琴音ちゃんに任せるけど……」
「ああ。いいんじゃねえか。好きそうだし」
「うん。じゃあ、よろしくね。頑張って」
祈祷を続ける響揮に労いの言葉をかけてから、琥珀入りのリュックと裳の箱を持って社を出る。
マンションに戻ってから、シャワーを浴びてバスタオルを巻く。その上にバスローブを着た。
琥珀は、部屋の隅で待機中。琴音には悪いが、少し時間のかかる買い物を頼んだ。
これで準備完了。
琴音を玄関で見送ってから、私はバスローブを脱いだ。