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悦楽にて成仏して頂きます
第13章 陰陽師
仕方なく、私はバイブを持ったまま堂々と部屋へ戻った。
出る為にドアを開けた時、琥珀はさっさとリビングの方へ行ってしまっている。
ノックの音。
「楓。着替えたら、リビングに来い」
「解ったー!」
リビングという事は、何か話があるのだろう。
「琴音はいねえのか?」
「うん。お使いに行ってもらってる」
私はバイブを片付けると、急いで部屋着に着替えてリビングへ行った。
「オツカレ。ホラ」
響揮が、封筒とペットボトルの水を差し出してくる。封筒は除霊代でも、水までくれるなんて珍しい。
「ピザ、頼んどいたから。もう昼だからな」
「ありがとう……」
それは、私が昼食を作らなくて済むようにだろう。でも何だか、響揮の様子がおかしい気がする。
取り敢えず私は、ソファーに座って半分ほど水を飲んだ。疲れていたし、シャワーを浴びた直後で喉が渇いていた。
「お前。ちょっとだけ、厳しい修行をする気、あるか?」
「内容によって、かな……」
陰陽師の修行なら、厳しいものだろう。響揮は“ちょっと”と言ったが、私には“かなり”かもしれない。
「夜明けから次の夜明けまで、社で経を読み続ける。陰陽師には、初歩の修行だ」
「丸1日? 食事や、飲み物は?」
「摂れねえ。経は、新しいやつに振り仮名を振ってやるから」
陰陽師には、と言われても、私は注入の儀でいきなり陰陽師になったばかり。
「それが、必要なの?」
「絶対ってわけじゃ。あっ、ピザ来た」
チャイムの音に、響揮がモニターで確かめてから玄関へ行く。
丸1日水分を摂らないなど、自信が無い。食事はいいとしても、経を読み続ければ余計に喉が渇くだろう。
響揮は運んで来たピザや2人分のサラダ、チキンなどの箱を開けた。
「いただきます。慣れたよ。コレ言うのに」
「ねぇ。今までの儀式じゃダメなの? それとも、そういう修行をする段階なの?」
響揮は考えながらも、ピザを食べている。
「今までのお神酒の修行だと、最低でも後2、3週間。かかるヤツは、3,4か月かかる」
「桜火の命日まで、後2ヶ月くらいだよね……」
3ヶ月もかかれば、間に合わない。
「桜火が、社を狙って、動き出したんだ……」