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悦楽にて成仏して頂きます
第14章 修行
「桜火が、動き出した、って?」
響揮は、食べ掛けのピザを食べ終えてから話し出した。
「社の結界を、弱めに来てる」
「元々霊は、結界から入れないんでしょう?」
「桜火は、元陰陽師だ。社の結界が全部無くなったら、どうなると思う?」
私には解らない。
「お前のマンションのコト、思い出せよ」
「あっ!」
私の元々のマンションから結界やお札を消されたせいで、霊が集まって来ている。
「社が、霊だらけになるの?」
「勿論、させねえけどな。オレが死ねば、オレが張った結界は全部消えるけど」
「さっき言ってた修行で、どれくらい力がつくの?」
響揮は、サラダをつつきながら考えているようだ。
「お神酒の、2、3週間分。元々能力の強いお前なら、一気に開花するかもしれねえ」
「私、やる! お神酒でチンタラやってるより、早いんでしょう。だったらやる!」
言葉は悪かったかもしれないが、それが正直な気持ち。特に桜火が社に手を出し始めたのなら、早く強い陰陽師にならなければ。
「いつにする?」
「えっと……。明日?」
「じゃあ、さっさと喰って、お互いの支度をしねえとな」
響揮には、経本に振り仮名を振るなどの支度がある。だが私は、何の支度をすればいいのだろう。
「お前は、今から寝とくんだよ。しっかり喰ってからな」
また、心を読まれているような感じだ。
「ねぇ、響揮……」
「さっさと喰えって。水分も、寝る前までならいい。明日は、体力の為に何か摘まむ程度。トイレにも行けねえからな」
そうだ。水さえ飲めないのなら、トイレにも立てないだろう。今食べておかなければ、明日1日は何も食べられない。だが、トイレの方が心配だ。
「大人用の紙オムツ、買ってくるから。みんなそうしてる。3日3晩続く修行もあるからな」
オムツは恥ずかしいが、響揮が平然と言うのはそれが普通だからだろう。
「ん。よろしく……」
そう言ってから、私はサラダを食べ始めた。
明朝は糖分の多い飴を舐め、3時にマンションを出た。
そんな時間なのに、響輝から聞いていた琴音が送り出してくれる。
「ご無事をお祈りしています」
「ありがとう」
夏は日の出が早い。
持ち物は、いつもと同じ。