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悦楽にて成仏して頂きます
第14章 修行
社へ着くと、すぐ裳に着替えた。響揮も、いつもの正装をしている。
まずは響揮が焚火の前に座り、普段と同じように火を炎にしていく。
それから私は、響揮の座っていた場所へ移った。
「オレはここで、木をくべる」
響揮は少し離れた場所に座る。
くべる木は、いつもより凄く多い。丸1日、炎を絶やさない為だろう。
「奥にも木を用意してある。オレが動いても、気にすんじゃねえぞ」
「うん……」
「もうすぐ日の出だ。始めろ」
響揮に言われ、私は教本を開いた。
片手で持てるような小さな本は、蛇腹型で20ページほど。最後まで唱えたら、また最初から繰り返すと響揮に聞いていた。
私は、黙々と経を唱える。
その横では、時々響揮が木をくべていた。
とにかく集中しなければ。それだけを考え、経を唱え続ける。
今私が出来るのは、日の出まで集中して経を読む。それだけだ。
何時間経ったかなど、そのうち気にならなくなっていた。
何十回も読んでいると、経が段々と頭に入ってくる。私自身も、不思議な世界に入ってしまったよう。
途中までは苦しかったが、それを通り越すと感覚が麻痺していく。声は枯れていたが、それさえも気にならなくなった。
「日の出だ。もういいぞ!」
響揮の声は聞こえていたが、最後まで経を読んでから本を閉じた。
「お、し、まい……?」
「そうだ。ホラ」
響揮がペットボトルの水をくれる。それを飲み干してから立ち上がろうとすると、足がもつれて響揮に抱き留められた。
違う世界から、戻って来たような感覚。
「よくやった。完全に開花した」
響揮に抱きしめられ、全身の力が抜けていく。
自分が、青いオーラに包まれているのが解る。
私は霊になってしまい、オーラを放っているのだろうか。何の為にやっていたのか、何をしていたのかさえ忘れてしまった。
スっと、体が楽になったように感じ。
私は、自然と目を閉じていた……。