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悦楽にて成仏して頂きます
第15章 決戦
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前……。臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前……」
「楓さん? 何をするつもり? そう言えば、開花したんだよね。僕に術を当てる気なら、兄さんを先に殺すよ?」
その言葉に一瞬怯んだが、私は呪文を続けるしかない。
響揮の願いは、社を守る事。
その為には、桜火を消滅させなければならない。
桜火の全身が、赤いオーラを帯び始める。
響揮が左手をかざすと、赤いオーラに包まれたまま桜火の動きが止まった。
「楓っ! 唱え続けろ! 水の炎に包まれるまで!」
私は返事もせずに呪文を唱えていたが、桜火はすぐに動き出す。
「兄さん。効果が無いの、解ってる?」
「ギャー!」
琥珀が雄叫びを上げ、桜火を琥珀色の術で包んだ。
「琥珀……。お前も手伝ってくれるのか」
助けたいと思ったが、私は集中して呪文を唱え続けた。
「凄い猫ちゃんだね。でも所詮、石の能力!」
桜火が琥珀に掌を向けると、琥珀は数メートルも飛ばされてしまう。
「ギャー!!」
「琥珀っ! くそおっ」
「悪いけど、楓さんにもね……」
桜火より先に、響輝が私へ術を投げる。
私の全身は透明な泡のような物に包まれ、桜火の術を跳ね返した。
「兄さん。守護だけは、得意なんだよね……」
響揮が、また桜火の動きを止める。
目の前で起こっている事態が異様すぎて、中々心から集中出来ない。
それでも、目を瞑って呪文を唱え続けた。
響揮と戻って来た琥珀で、何とか桜火を抑えているようだ。
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前。臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前……」
「烈火(れっか)!」
桜火の声がした後、つい目を開けた。術のせいか、響揮が社に叩きつけられている。さすがに苦しそうな表情。
「響揮!」
つい言ってしまった。
「構うなっ!」
「ギャー!」
響揮も琥珀も、大分体力を消耗しているようだ。全身で呼吸をしている。
桜火と戦えるのは、私しかいない。
桜火に勝てるのは、水の能力を持つ私だけ。
響輝が、手を着きながら立ち上がる。
「諦めが悪いね。僕だって、誰も傷付けたくはないんだよ?」
桜火は余裕。
響輝は、それでも術を繰り出していた。でも、確実に力は弱まっている。それを琥珀が援護し、何とか桜火を止め続けている状態。