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悦楽にて成仏して頂きます
第15章 決戦
その様子を見ながらも、私はある意味傍観者の境地。気持ちだけは、完全に呪文を唱える事へ集中している。
響輝が、また社へと叩きつけられた。
今の私は、声も上げない。
集中を切らせば、今までの全てが無駄になってしまう。響輝に出会ってからの全てが、“無”になってしまうような気がした。
琥珀も、小さな体で懸命に戦っている。
そんな中、私は呪文を繰り返した。
段々と、力が溜まってくるのを感じる。何故かと訊かれても答えられない、不思議な感覚。
響輝はまた社に叩きつけられ、琥珀は後ろへ飛ばされる。何度繰り返されても、響輝と琥珀は諦めていない。
2人と1匹での、桜火との戦い。
人数では圧倒的に勝(まさ)っているはずなのに、桜火1人を倒せない。
響輝が言っていた通り、桜火は最強になってしまったのだろう。
浮遊霊か地縛霊になるまで、後2ヶ月も無い。3年近くもの間、桜火はひっそりと力を増していた。
以前なら可哀そうだと思えたが、今はそんな情さえ浮かばない。
「猛火(もうか)っ!」
私へ向けられた桜火の術が、直前で跳ね返る。響輝の守護の術のお蔭だろう。
響輝は、さっきから桜火を止める術だけ。桜火より弱いとは言っていたが、止めている間に攻撃術を放てるはず。
それをしないのは、自分の手で桜火にダメージを与えたくないからかもしれない。
桜火の息も乱れ始めたが、まだ余裕がありそうだ。
「兄さん。そろそろ、諦めたら?」
桜火を倒すのは、私の役目。
そう思った瞬間、自分の体から水の炎が上がった。