この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
悦楽にて成仏して頂きます
第15章 決戦
「着替えたか? 帰るぞ……」
「うん……」
「ニャー」
響揮は裳を畳んで箱にしまうと、奥の部屋へ持って行く。
「もう、使う事はねえ……」
響揮が持って来てくれていたリュックを背負おうとすると、もう琥珀が入っていた。
「今日は、文句は無しで運んであげる」
「ニャー」
リュックの中からは、「当たり前だ」と言うような鳴き方。
響揮には話しかけられないまま、マンションへ戻った。
何も知らない琴音が、「お帰りなさい」と笑顔で出迎えてくれる。
でも、琴音は目を合わせない。
響揮は、無言のまま自分の部屋へ行ってしまった。
「お食事は、どうなさいますか……?」
「ん……。今日の修行、キツかったから……。響輝も、疲れてるんじゃないかな……。私も、少し休むね……」
「はい。お疲れ様です……」
琥珀は、いつものソファーでお昼寝。今は、休息だろう。
私も部屋へ戻り、ベッドへ転がった。
桜火という者が、この世からいなくなった。元々霊ではあったが、その能力から人間にも姿が見えていたのに。
桜火を消滅させるとは言っていたが、実際目の前にして響揮もショックだったのだろう。私も、最期の桜火の姿が忘れられなかった。
響揮は、夕食にも出てこない。
琴音と2人、無言で食事をする。お互いに心配しているのは、響揮の事。
「ねぇ、琴音ちゃん。桜火って知ってる……?」
「はい。同い年ですから……。お亡くなりになって、もうすぐ3年ですね……」
戻ってから、琴音の視線の動きがおかしい気がした。話す時に琴音は、いつも視線を合わせるのに。話題が話題だし、私の気のせいだろうか。
「ごちそうさま。美味しかった」
私もそれほど食欲が無く、すぐに箸を置いてしまう。
「お疲れですか? お風呂へどうぞ。お2人に、おにぎりを握っておきますから……」
そう言った時にも、琴音は視線を合わせなかった。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
本当に、心身とも疲れている。
昨日から色々とありすぎて、私は湯船に浸かってからすぐにベッドで眠ってしまった。