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悦楽にて成仏して頂きます
第16章 それぞれの思い
「響揮さんは、もう召し上がっていますよ」
「え? すぐ行く」
部屋着に着替えて顔を洗ってからキッチンへ行こうとすると、途中のリビングでは琥珀が朝食を終えたところ。
「琥珀。昨日はありがとう」
「ニャー」
まるで「オレの能力を見たか」、とでも言っているよう。そのままソファーへ行き、前足を舐めている。
キッチンへ行くと、響揮が朝食の真っ最中。
まるで昨夜も、昨日の事もなかったようでホッとした。
「今朝は、洋食にしてみました。本で勉強したばかりですが……」
「美味しそう。いただきます」
テーブルには、フレンチトーストとオムレツのベーコン添え。それに小振りの野菜のココット。色目の綺麗なサラダもある。
どれも美味しくて、素直に感動してしまった。
「いかがですか? 初めての洋食なので……」
「全部美味しい。琴音ちゃん、凄く料理上手いよね。ねっ、響揮っ」
美味しいのは本当だが、話しかける口実に使わせてもらう。
「ああ。ごちそうさま……」
全てをたいらげた響揮が、椅子から立ちあがる。
「琴音。後で、部屋に行くから」
「はい」
琴音の返事を聞くと、響揮は廊下の方へ行ってしまった。
何の用があるのだろう。だが、2人は婚約者。私には関係ない。
シャワーを浴びて部屋へ戻ろうとすると、響揮が琴音の部屋へ向かっていた。
「お前は来るなよ」
「うん……」
2人の邪魔をするほど、ヤボじゃない。
今まで桜火の件で忙しかったから、琴音の部屋に行く時間が無かっただけ。婚約中の2人なら、部屋で会っても構わない。
セックスをしても……。
一々ホテルに行くのは、面倒だろう。
いくら想っても、絶対に叶わない恋。全てが落ち着いた今は、響揮への感情が強くなっている。
髪を乾かし、溜息とともにベッドに転がった。
1時間が経ち、自然と耳をそばだてている自分に気付く。
間にはウォークインクロゼットがあり、隣の部屋の声は聞こえないのに。
そう考えて、溜息をついた。
響揮が琴音の部屋で何をしていても、私には関係ないと解っている。
琴音はどんな体をしていて、どんな声を出すのだろう。スタイルは私と殆ど変わらないが、胸は私の方が大きい。
自然と、自分の胸を触る。そのうち、軽く揉んでいるのに気付いた。