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悦楽にて成仏して頂きます
第16章  それぞれの思い


 バイブを洗ってから、秘蕾も洗って湯船に入る。
 セックスを知ってからのオナニーは、切なくて空しい。バイブでイく事は出来ても、好きな相手の代わりでしかないのが身に染みた。
 今までたくさんの霊とセックスをして来たが、目的は成仏。その行為自体への空しさは感じなかった。
 片想いが、こんなに苦しいものだなんて……。
 漫画や小説などで読んできたが、実際に体験しなければ解らないもの。
 早めに湯船から出ると、バスローブにバイブを隠して部屋へ戻った。
 響揮はまだ、琴音の部屋にいるのだろうか。
 バイブを片付け新しい部屋着に着替えると、響揮の部屋の前まで行った。
 ノックしようとした手を下げ、溜息と共に踵を返す。
 響揮が戻っていたとしても、何を話せばいいのか解らない。琴音と何をしていたのかなど、訊けるはずもなかった。
 部屋に戻り、ふと左手の親指を見る。
 以前撮った写メと比べると、神眼の目はかなり大きくなっていた。
 響輝の言っていた通り、儀式や修行で開花したからだろう。
 ベッドにスマホを置き、横になる。激しいオナニーの疲れもあって、そのまま眠っていたらしい。ノックの音で目が覚めた。
「楓。開けるぞ」
「ん……」
 返事は小さくて聞こえなかったはずなのに、響揮が勝手にドアを開ける。
「起きてるんだろ。少ししたら、リビングに来い。色々と、話がある」
 それだけ言うと、響揮はドアを閉めて行ってしまった。
 色々というのが、気になる。
 髪をとかしてから、急いでリビングへ向かった。


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