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悦楽にて成仏して頂きます
第17章  真相


「何? 話って……」
 リビングへ行くと、響揮がコーヒーを出してくれる。
「ありがとう」
 琴音は、和服姿で響揮の横に座っていた。最近は洋服を着ていたのに、こんな時に和服だと特別な話としか思えない。
「何か、あったの?」
「色々とな……」
 そう言った響揮が、琴音に視線を送る。
「順番に話すな?」
「はい……」
 琴音は俯き加減。
 私は聞く立場。どんな話をされても、冷静でいようと思った。2人の結婚が早まったなら、受け入れなければならない。
「まず。琴音も、陰陽師ではある」
「えっ?」
 冷静でいようという思いを、ほんの数秒で忘れてしまう。
「でも、能力は僅かだ。術も出せねえ」
 琴音が小さく頷いた。
「だから、許嫁なの? 特殊能力を持った、子孫の為に」
 今度は響揮が首を振る。
「前も言ったけど、盆と正月に来るようになった頃から、琴音の様子を少しヘンだと感じてた。能力が弱すぎて、陰陽師だとは気付かなかった。さっき、話を聞くまでは」
 響揮も、いつもと様子が違う。真剣ではあるが、悩んでいるようにも見える。
「もしかして……。注入の儀で、陰陽師に、なったの?」
 それは、以前から2人に肉体関係があったと言う意味。自分を落ち着かせる為に、コーヒーを飲んだ。
 何となく、「ちゃんと聞けよ」と聞こえた気がする。
 許嫁は婚約者なのだから、誰にも咎められはしない。
「注入の儀を受けたのは、4年前だそうだ」
 私は頭の中で計算をする。4年前なら、琴音はまだ中学生。
「え? だ、そうだ?」
 その言い方は、響揮がしたわけでは無い。他の陰陽師と、4年前に儀式を行ったのだろう。
「桜火だ……」
「だって。桜火は、3年前に……」
「桜火さんとは、中学生の時から、たまに会っていました。病室では、手を握り合ったり、くちづけをしたり……」
 驚いて、固まってしまった。
 清純そうな琴音が、中学生の頃からそんな事をしていたなんて。
「でも。響揮とも、この前ホテルに行ったって、言ってたよね?」
 その時琴音は、恥ずかしそうにしていた。何かの目的で、兄弟に色仕掛けで迫るような子には見えない。
「ホテル……? ああ。メシ喰いに行ったトコだろ?」
 琴音が頷く。


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