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悦楽にて成仏して頂きます
第17章 真相
また、「バカ」と聞こえた気がする。
「メシ?」
響輝に釣られて、そう言ってししまった。
「ええ。ホテルのレストランに、連れて行って頂きました」
それだけなら、恥ずかしそうにする必要は無い。
「その時、帯にデザートを零してしまって……。声も上げてしまったので、周りから見られて恥ずかしくて……」
「それだけ?」
「え? ええ」
琴音にとっては、不作法として恥ずかしかったのだろう。
響揮が、大きな溜息をついている。
「お前、ラブホだと思ったんだろ。オレと琴音が、そんなトコ行くと思うかあ?」
「だってぇ……」
間違えるような言い方をしたのは琴音だ。
「帯の染み、取れたか?」
「はい。すぐ、クリーニングへ出しましたから」
「話を戻すけど……」
響揮がコーヒーに口を着けてから、仕切り直す。
「桜火と琴音は、恋人同士だった。たまに桜火外出が出来た時、2人はこっそり会ってたんだよな?」
琴音が頷く。
「注入の儀をした後は、普通に、ヤってたそうだ。子供を作ろうとして。琴音との子供が、早く欲しかったんだろ。あいつは、自分が長く生きられないのを、感じてたから……」
皮肉なものだ。長男の響揮と許嫁にされたが、琴音が愛したのは次男の桜火。
「結局、桜火さんとの子供は、身ごもれないままで……。最後に会った1週間後、桜火さんは、亡くなりました……」
琴音の瞳から、一筋の涙が零れる。
中学生で、桜火との子供を作ろうとするほどに愛していた。セックスは後から付いてくる物で、恋愛に年齢は関係ない。
「響揮さんと結婚すれば、桜火さんと家族になれる。同じ苗字を名乗れる。そう思って、父の勧めるまま、ここへ参りました……」
亡くなって3年になる今でも、琴音は桜火を愛している。
「お前とオレについても、全部話した。琴音の事だけ聞いて、隠しとくのはフェアじゃねえからな。以上だ」
注入の儀についても、話したのだろう。後は、セックス除霊について。恥ずかしいとは思うが、確かに隠すのはフェアじゃない。
「楓さんのなさっている事は、立派だと思います。でも……」
琴音が言葉を切ってから、少し響揮を見つめた。
「一緒に暮らして、響揮さんが愛してらっしゃるのは、楓さんだと解りました」