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悦楽にて成仏して頂きます
第17章 真相
「何、言ってん、だよ。楓は、オレの……。助手だ」
「いいえ。今までの言動から、解りました。楓さんを、とても大切に思っていらっしゃるのが」
今度は、琴音が私を見つめた。
「楓さんも、同じですよね?」
「え……」
「父に怒られますが、私は実家へ戻ります。お2人の為にも、自分の為にも。想いを偽って、結婚は出来ません……」
琴音は、ずっと桜火を想い続けるつもりなのだろう。
胸が痛い……。
桜火は3年前に亡くなっていたが、天界へ行かれなくしたのは私。せめて最期の前に、普通に会わせてあげたかった。
「琴音は僅かな特殊能力で、桜火が消滅したのを感じ取ってる。それをしたのが、オレ達だって事も……」
だから昨日から、元気がなかったのか。
桜火は既に亡者でも、確かに存在はしていた。琴音にとっては、それが唯一の救いだったのかもしれない。
響揮の指導もあったが、実際に消滅させたのは私。
仕方なかったが、琴音は苦しんでいるだろう。でも、存在させてはおけなかった。
「以上」
それだけ言うと、響揮はコーヒーを飲み干して部屋へ行ってしまう。
「楓さん。お手数ですが、引っ越し業者の手配をして頂けませんか? 私は、よく解らなくて……」
まだ、何も言えなかった。
私が響揮を好きなのは、事実。でも、響揮が私を好きだなんてあり得ない。
「響揮に、訊かないと……」
「いいえ。何もおっしゃらなかったのが、ご返事です。昔から、そういう方ですから……」
琴音は、子供の頃から響揮を知っている。私以上に。
響揮は、桜火と琴音の仲に感づいたのだろう。だからさっき、話し合いの場を持った。
「ん……。解った……」
「ありがとうございます」
琴音が深く頭を下げる。
「荷造りは、自分でしますので。来た時の段ボール箱が、取ってありますから」
そう言うと琴音は立ち上がり、自分と響揮のカップをキッチンへ持って行く。
「宜しくお願い致します……」
戻り際にも頭を下げ、それ以上は何も言わずに自分の部屋へ行ってしまった。
私はコーヒーの残ったカップをそのままに、響揮の部屋へ行く。
「ああ? 何だよ」
ドアを開けると、響揮は何故か不機嫌そう。
「入るね」
勝手に入り、ドアを閉めた。