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悦楽にて成仏して頂きます
第17章 真相
「琴音ちゃん、本当に帰るってよ? いいの?」
「ちゃんと話聞いてたのか? オレとは結婚出来ないって言ってたろ」
それは聞いていたが、可哀そうな気がする。
「したいように、させてやれ。琴音はまだ、桜火を忘れてねえ」
これからもずっと、琴音は桜火を想って生きていくのだろうか。
もう、絶対に会えない人……。
琴音自身も、桜火の消滅に気付いているのに。それでも、愛情は変わらないのだろうか。
「ああ、そうだ。お前は能力が開花したから、もう、霊とセックスしなくてもいいぞ。したいなら、しても構わねえけどな」
「しなくていいなら、するわけないでしょう!?」
「そっか……。じゃあな」
響揮に背中を押され、部屋を追い出された。
こんな不愛想な響揮が、私を好きなはずがない。好きなら、もっと優しくしてくれるだろう。
響揮が優しかったのは、注入の儀の時しか覚えが無い。
私はただの助手。
いつか響揮にも、付き合いたい相手が出来るだろう。見かけはいいから、もう少しきちんと話せば。
自分の部屋へ戻り、パソコンで引っ越し業者を予約した。代金支払いの口座は、私の物にして置く。
私からの、ささやかな餞別(せんべつ)。
決定キーを押すのに躊躇ったが、琴音が望んでいると考えてから押した。
廊下へ出て、琴音の部屋をノックする。
「はい。何かご用ですか?」
「引っ越し。1週間後だけど。大丈夫?」
「はい。それまでには、片付きます。ありがとうございます」
既に琴音の部屋の中は、引っ越し準備の真っ最中。私は遠慮して、すぐ自分の部屋へ戻る。
冷静になって思い出すと、響揮からの話は衝撃的だった。
ベッドへ転がり、天井を見つめる。
琴音と桜火が、真剣に愛し合っていたなんて。それも、中学生の時から。
違う。愛し合っていた。という過去形じゃない。
琴音は、桜火を愛している。亡くなって、3年も経つ今でも。
消滅も、知っているのに。
それほど愛し合えるのを、羨ましいと思った。
私の片想いは、いつまでも続くだろう。本当の想いを話して、気まずくなるのは嫌だ。それならば、このままの関係でいい。
何故か溜息が漏れた。