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悦楽にて成仏して頂きます
第17章  真相



 翌日、琴音が夕食の片付けをしている間に、響輝の部屋へ行く。
 大事な話があると言い、無理矢理中へ入った。
「何だよ……」
「ん……。あのね……。桜火の、事なんだけど……」
 ソファーへ座ると、響輝が向かいに座る。
 言おうか、黙っておこうか、ついさっきまで迷っていた。
 でも琴音の事を考えると、どうしても響輝に聞いておきたいと思ってしまう。
「桜火がね。私に、恋人になって欲しいって、言ってたの。街で会ったり、お茶した時に」
 何となく、俯きながら話し始める。
「能力の高い跡取りが欲しいって言ってた……。ただ、それだけで。私の事なんて何も知らなかったのに……」
「で?」
 顔を上げ、気怠そうに訊く響輝を少し睨んだ。
「真面目に聞いてよ! 琴音ちゃんは、あんなに桜火が好きなのに、桜火は、琴音ちゃんが好きじゃなかったの?」
 彼女はこれからも、桜火を想い続けるだろう。
 霊になっても実体があった桜火なら、琴音とだって会えたはずなのに。
「前に言ったコト、忘れたのか?」
「え?」
「霊になると、現世の記憶が薄れる。教えたろ?」
 それは覚えている。霊は自分が18歳だと思っていても、生きていれば20歳だったり。
「前に、桜火が制服を着てたって言ったよな? お前の友達も見たって」
「うん……」
「それが逆に、記憶が薄れてる証拠だ。ちゃんと記憶があれば、自分が18歳なんだって解るよな? もう、高校生じゃねえって」
 言われてみれば、そうだ。
 記憶が止まったのではなく、亡くなった時点から段々と忘れて行く。
 私が除霊をした霊達も「多分」や「確か」が多かったりして、亡くなってからの“時”を忘れていた。
「桜火も、琴音の記憶が薄れてたんだ。霊でいたのが長すぎたから、完全に忘れたんだろ……」
「そんな……」
 言ったが、それは仕方が無い事実。
「え……? でも、響輝については、覚えてたよね? 名前も、兄弟だって事も」
「霊になった直後、桜火をすぐに探し当てて、話しをしたからな」
 桜火も、お茶した時に言っていた。響輝とは、3年前から何度も話し合っていたと。


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