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悦楽にて成仏して頂きます
第17章 真相
響揮は社での祈祷。私は手に入れた能力で、質(たち)の悪い霊を成仏させる。
そんな日々を過ごしいてるうちに、1週間はあっと言う間。
「琴音ちゃん。たまには、遊びに来てね」
「はい……。お2人共、お世話になりました。響揮さん。もっと楓さんに、優しくしてあげてくださいね」
深くお辞儀をして、顔を上げた時の笑顔が最後。琴音は実家へ戻って行った。
何となく、琴音の使っていた部屋を開けてみる。
残っているのは、ベッドや備え付けの家具だけ。
キッチンの冷蔵庫には、日付を書いた保存容器に入った惣菜の数々。冷凍した物もあった。
最後まで、琴音らしい。
「なあ。オレって、冷てえのか?」
「えっ? 自覚して無いの?」
「じゃあ。優しくするって、何すんだよ」
改めて訊かれると、私も考えてしまった。響揮の態度に、慣れてしまったせいもある。
「何だろう……」
「だろ?」
確かに恋人同士ならスキンシップなどあるが、私と響輝はそういう関係では無い。
「私は……。響揮が、好きだよ……」
つい、口にしてしまった。でもこれくらいなら、友達関係としても成り立つだろう。
「オレだって、お前が、キライじゃねえから、一緒に、住めんだろ……」
「嫌いじゃないって、事は?」
鼓動が跳ねる。
「好き、だよ。あの夜、何で、お前の、トコに行ったか。解んねえのかよっ。バカっ」
それは、桜火を消滅させた夜だろう。
子供のようにしがみつき、泣いていた響揮。体を震わせながらの、体温を思い出す。
「バーカ」
響揮が背中を向ける。
「1人で、個室のバーにでも行けば、いくらでも、泣ける……」
そうしなかった意味を、きちんと知りたい。
「私は、響揮を、男性として、好きだよ……」
振られるのは覚悟。このマンションも出て、響揮と縁を切ればいいだけ。覚悟は出来ている。
急に振り返った響揮に、抱きしめられた。
「バカヤロー! 気付けよっ。何でお前を、強い陰陽師にしたと思ってんだよっ!」
「桜火の、為でしょう?」
30センチ以上背の高い響揮は、私を抱きしめたまま。彼の胸に押し付けられ、顔も見えない。
「その先の、為も……」
「その先? 助手を、やるから?」