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悦楽にて成仏して頂きます
第2章  祈祷師


 響輝が私を理解してくれたように、彼も仲間がいるのは心強いはず。多分。
「響揮。仲間、っていうのかな? そういう人を、もっと増やす気はないの?」
「バカ。だから言ったろ? 探してるって。マジいねえんだよ。特殊能力を持ったヤツ。持ってても、弱すぎるヤツなら、たまーにいるくらいかな」
 響揮が溜息をつく。
 私には解らないが、彼なりに苦労しているのだろう。
 響揮には本業の、祈祷という仕事がある。今まで、何百何千という人と霊を助けているはず。
 今回のように、死亡者が出た家で霊障が起きる例は少なくない。心霊番組で廃墟に潜入していたりすると、テレビでは何も言わなくても、私にはあちこちに霊が見える。
 それは多分、亡くなってから何十年も経った地縛霊。手を合わせて成仏を願うが、テレビ越しでは多分効果は薄いだろう。
 潜入自体、危険な行為。取り憑かれに行くようなもの。
 そんな霊達を助けられるのが、響揮。私は、響揮以外に知らない。言葉にはしていないが、彼だけが唯一の私の理解者だから。
 初めて会った時に連れて行かれたのは、祈祷の拠点となる社。
 鳥居の先の両側が森林になった長い階段の上にあり、途中にはよく霊も出る。でも彼が張った強い結界の為、階段の途中までしか霊は近付けない。
 社の中は、正に神秘的な世界。神棚には鏡が祭られていて、見た瞬間に体が熱くなる感じだった。
 その下の壁には、星型が描(えが)かれた上に、何かの呪文らしきものが書かれた大きな布。机には太いろうそくと大きな榊(さかき)。その前には、焚火(たきび)の後のような物も。あちこちに貼られているお札も、響揮が書いているそうだ。
 布の文字もそうだが、達筆すぎるのか全く読めない。どちらかといえば、違う時代の文字のよう。
 霊が見え触れる事は出来ても祈祷師に関して詳しくないが、部屋にある全てのものから、何かしらの強いパワーを感じた。
 そこで響揮から聞いたのが、私にはセックスで霊を成仏させる力があるという事。
 最初は戸惑いだけ。でもその場で再度彼に術を唱えられて以来、セックス絡みで成仏出来ない男性の霊に着きまとわれるようになってしまった。


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