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悦楽にて成仏して頂きます
第3章 霊の望み
「はぁっ……。んっ……」
今までに無い絶頂感。
朦朧とした頭と、力の入らない体。それが解っているのか、彼は暫くそのままでいてくれた。
「悦かったよ。望みも、叶って……。少し、話していいかな」
「え……」
詳しい話を聞いて、また暴走されては敵わない。この状態から衣装に着替えるのは、少し時間がかかる。怒り出してからでは、間に合わない。
すると急に彼の体をすり抜け、私はシーツの上にふわりと落ちる。
ベッドを降り自分から白装束を着た彼は、白い光に包まれていた。
これならきっと大丈夫。もう暴走はしない。今までの経験から、それは解っていた。
「どう、して……?」
「急性心筋梗塞で、いきなり死んで。最初は、どうしたらいいのか、解らなかった……」
それはそうだろう。私だって急に死んで現世に置き去りになれば、どうしていいか解らない。街を彷徨っているのは、そんな霊が殆ど。自分はどこへ行けばいいのか、解らないまま。だから普通の生活を送り、生きている家族には霊障を感じさせてしまう。殆どが、悪意を持って霊障を起こすわけではない。
3年以内に成仏出来なかった浮遊霊は、廃屋などに住み着き、そこが霊達の家。そんな所へ遊び心で入ると、不法侵入者として威嚇(いかく)されたりする。他人の家に、勝手に入るのと同じだ。
「妻と子供はいたけど、元々お嬢様のせいか、正常位以外を嫌がったんだ……」
セックスの仕方は自由でも、正常位だけでは勿体ない気がする。
「他の体位もフェラも。1度でいいから、色々、してみたくてね……」
私は何とか体を起こす。
「妻を裏切って、風俗には行きたくなかったし。でも死んだ後なら、許されるかな、と思って……。だから今日した事、殆ど初めてなんだ」
童貞じゃなくても、経験の無いセックスがある。それが彼の未練だったのか。
妻を裏切れないという、彼の真摯な思いに感動した。
今はもう死後。それでも彼はきっと、奥様を考えながら私としていたのだろう。
私は代わりでいい。それで、彼が成仏出来るなら。