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悦楽にて成仏して頂きます
第4章  響輝


 インターフォンのチャイムに、目を覚ます。
 時計を見ると、2時間くらい眠っていたようだ。
 もう夜の12時。朝まで眠っていたかったが、こんな時間に来る相手は決まっている。
 インターフォンの画面に写っているのは、やはり響揮。
「ちょっと待ってて」
 そう言って、軽くシャワーを浴びた。下着を着けてバスローブを着、玄関を開けた。
「よっ。オツカレ」
 何も言わないのに、響揮はいつものように上がり込んでくる。シワになったシーツをごまかすケットに座ると、飲み物まで要求して来た。
「はい……」
 冷蔵庫から、ジュースのペットボトルを渡す。
「酒、ねえの? ビールとか」
「無いよ、そんなのっ!」
 そう言うと、響揮は渋々ジュースを飲み始めた。
「私、もう寝たいんだけど」
「使命を忘れるほど、悦がってたもんなあ。オレが、目を覚ましてやったろ?」
 やはりあの頭痛は、響揮の仕業。
「ちゃんとやってるんだから、たまには、いい、じゃない……」
 知られているなら、開き直るしかない。
「お前に、頼みが、あるんだけど……」
 珍しく、響揮が言葉を濁す。
「凄く、難しい、霊がいるんだ」
 キッチンから椅子とジュースを持って来て、響揮の前へ座った。
「お前今まで、どれくらい除霊したっけ?」
「ん……。30体くらい、かな?」
「じゃあ、まだムリか……。最低でも、100はいかねえとな……」
 私はジュースを噴き出しそうになった。
「100!? 1年ちょっとで30なんだよ? 最近、増えてはきてるけど。後何年かかるか、解んないじゃない」
「なら、今の話は忘れろ。お前、明日は休みだろ?」
 嫌な予感がしながらも、頷いて見せる。
 昨夜も除霊のセックス。大学にも行ってバイトもあったから、本当は疲れ切っている。
「社に来いよ。お前の能力、上げてやるから」
 正直、これ以上力が上がらなくてもいいと思っていた。
 セックス目的の霊が、もっと頻繁に現れるかもしれない。今でさえ大学のトイレの隅に佇む女性や、公園で首を吊った状態の男性が見えているのに。


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