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悦楽にて成仏して頂きます
第4章 響輝
たまに街で、「どこへ行ったらいいですか?」と声をかけられる時もある。見た目は人間で普通の服装をしていても、私には霊だと解ってしまう。
そういった類(たぐい)は無視するよう、響揮から言われていた。余計な温情をかけると、そのままずっと付いて来られるらしい。中途半端な能力だと、霊障を起こされたり、取り憑かれたりしてしまう。
「ほら、行くぞ」
響揮が、半分ほど飲んだペットボトルを渡してくる。
「ちょ、ちょっと待ってよっ。着替えないと」
下着は着けているが、バスローブのまま。流石にこれで外は歩けない。
クローゼットから服を出し、急いでキッチンで着替える。
「新しい装束と、数珠と短刀も忘れずにな」
「どうして?」
「いいから。早くしろよ」
響揮に急かされ、私はそれらが入ったバッグを持って部屋を出た。