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悦楽にて成仏して頂きます
第4章 響輝
「私の他に、響揮を手伝ってるのは、何人いるの? セッ、クス、以外で」
「今はお前だけ」
「ええっ!?」
セックス除霊者は別としても、手伝いなら少なくとも他に、数人はいると思っていたのに。
落ち着こうと、私もカクテルを飲み干した。
「行けるじゃん。呑め呑め」
「呑めじゃないよっ。何なの? 私だけってっ」
聞いているのかいないのか、響揮はインターフォンを使い、私用のピッチャーのカクテルとつまみを頼んでいる。
店員が全てを運んで来ると、彼は私のグラスに氷の後カクテルを注ぐ。
「バカ。だから、探してるけどいねえんだって。だからこうやって、礼をしてるだろ? あっ、コレも忘れてた。今回の祈祷料」
響揮が差し出す封筒を、受け取った。
中には30万円。
「こんなに……?」
「紹介料は引いてあるから、大丈夫だって」
彼は軽く言う。
「ありがとう……」
「礼なら、心で依頼者にしろ」
「うん……」
空けた封を何度か折り、大きなバッグの底へしまった。
響揮の除霊は、半年以上待ち。それは、全て彼1人でやっているせい。でも、セックス関連は全て私のシゴト。響揮に、申し訳なさそうな素振りは全く無い。
私もヤケになって、またグラスを一気に空けた。
メニューを見て知らない名前だったが、このカクテルは呑みやすい。殆どオレンジジュースのようなもの。
響揮は笑いながら、またカクテルを注いでくれる。
訊きたい事はたくさんあっても、何だかはぐらかそれそうだからやめた。
「勉強は大丈夫か? 解んないトコあったら、教えてやるぞ?」
「響揮が?」
つい笑ってしまう。馬鹿にしたわけじゃなく、彼と学問が結び付かない。
「笑ってろよ、バカ。オレ、国立大出だぞ?」
「うっそぉ……」
「1年だけ大学院にいたけど、祈祷の仕事が忙しくなって辞めた」
国立の大学院……。
声が出ないのを、カクテルを呑んでごまかした。
祈祷師と助手として、もう1年以上の付き合いなのに。私は響揮について殆ど知らない。
「まっ、今日は楽しく呑もう。カンパーイ」
よく解らない乾杯をしてから、またカクテルを口にした。