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悦楽にて成仏して頂きます
第5章 目醒め
「お前はもう、その短刀だけで成仏させられる。数珠や装束はいらねえ。セックスは、必要だけどな」
セックスと言われ、自分が全裸なのに気付いた。
「キャー!」
すぐにバスタオルを巻く。
大事が終わり安心していた琥珀は、私の声に驚いてしっぽを膨らませていた。
以前はセックスの後暫くして、響揮はマンションにやって来る。まだ秘蕾はビショビショのままだし、全裸まで見られてしまった。
珍しく気を遣ってか、彼が後ろを向いて話し始める。その足元に、琥珀がちょこんと座った。
「ヤツは彼女にフラて、自殺したらしい。遺体は、まだ見つかってねえ」
「だから、離さないって、言ってたんだ……」
暴走したとはいえ、可哀そうな霊。遺体が見つかっていないのなら、まだ1人淋しい場所にいるのだろう。
「オレは社に行って、ヤツの遺体の場所を探す。お前はシャワーを浴びたら、リビングで待ってろ。琥珀のメシ、頼んだぞ」
それだけ言うと、響揮は急いでドアを開ける。
「琥珀のゴハン? どこにあるの!?」
「琥珀に訊け!」
響揮は、玄関を出て行ってしまった。
リビングで待っていろと言ったのは、何か話があるからだろう。シャワーを浴び、元の服に着替えてからリビングへ行った。
「ニャー、ニャー」
琥珀が足下にすり寄って来る。
エサの場所は琥珀に訊けだなんて。琥珀は話せないのに。料理なら少しは出来るが、それは人間用。
「ねぇ琥珀。ゴハンのある場所、解る?」
無駄だと思いながら訊いたが、琥珀はキッチンの下の扉を前足で叩いている。
「そこ?」
半信半疑ながらも開けてみると、たくさんの缶詰が入っていた。全て猫のエサ。
1つを取り出し、その辺の皿に盛ろうと手を伸ばした。
「ニャー! ニャー!」
「え? もしかして、違うの?」
琥珀は、今度はエサの隣の扉を叩いている。
「そこ?」
開けて見ると、猫の柄の付いたエサ入れとランチョンマットがいくつかあった。
「琥珀。本当に、言葉が解ってるの……?」
「ニャー」
そうだよ。とでも言っているよう。
そう言えば琥珀は、琥珀色の光を放っていた。私よりも、強い特殊能力があるのかもしれない。