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悦楽にて成仏して頂きます
第5章 目醒め
「ニャー!」
「あ、ごめん。どこで食べるの?」
そう訊くと琥珀は窓側へ行き、ランチョンマットのスペースを空けた位置に座った。
「琥珀。話せないだけで、本当に、全部解ってるの?」
言いながら、引き出しにあったスプーンで琥珀の皿へエサを盛る。
琥珀の前にランチョンマットを敷き、そこに皿を置くとすぐに食べ始めた。
響揮のペットだけあって、不思議すぎる猫だ。
使ったスプーンを洗ってから、私はソファーへ座った。
3時間経っても、響揮は戻って来ない。これなら、ベッドでひと眠り出来たのに。
琥珀は食後から、ソファーで丸くなって眠っている。
猫柄の皿やランチョンマット。あれを響揮が買っているところを想像すると、何だか可愛く思えてくる。
「琥珀、琥珀っ。寝ちゃったの? それとも無視? まぁ、いっか……」
今いる場所を知らないから、社までどれくらいかかるのかも解らない。でも、社からそう遠い場所には住まないだろう。行き来するのが大変になる。そんな彼の性格は、解っているつもりだ。
さっきの疲れでウトウトしていると、リビングに響揮が入って来た。
「200万ゲット。大変だったろ。半分が、お前の祈祷料な」
響揮に差し出された封筒を受け取る。
持っただけで解る。いつもとは違う厚みと重さ。中を見ると、帯のついた1万円札の束。
「何、なの? これ……」
「祈祷料だって言ったろ。見つけて、依頼人と警察と一緒に、遺体を回収してきた。ヤツの勤務先の会社の、使われてねえ倉庫で首を吊ってた」
今更ながら、響揮の能力は凄いと思ってしまう。
「可哀そうに……」
「そう考えるな」
「どうして?」
どんな亡くなり方でも、可哀そうなのに違いは無い。
「そう考えると、余計に霊が暴走する。付け込まれる感じだよ」
響揮は冷蔵庫から缶ビールを2本出すと、1本を差し出してきた。