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悦楽にて成仏して頂きます
第5章 目醒め
「琥珀も行くのか。いい場所見つけたなあ」
「ニャー」
玄関へ行くと、振り返った響揮が笑っている。
仕方なく琥珀を入れたバッグを持ち、響揮に付いて行った。
社の場所は、マンションの隣。
エレベーターで1階まで降り、鳥居をくぐってから階段を登る。
社に着いてお互いに着替えると、響揮はまた火を炊く。
琥珀は焚火の前に座り、ジッと火を見つめているようだった。
「楓、隣に来い」
「は、はい……」
社だと、何故か自然と敬語になる。この神聖さが、そうさせるのだろう。それに、響揮の隣に呼ばれるなんて初めて。目の前の炎を見つめながら、次の言葉を待った。
響揮が立ち上がり、神棚の鏡を降ろす。
私からすればかなり上にあって小さく見えていたが、近くで見ると直径は30センチくらいもある。
呪文を唱えながら鏡を何度か火にかざし、私の前へ持って来られた。
「えっ……?」
写っているのは私の顔ではなく、私のマンション。全体が、黒い雲のような物に包まれている。
次の瞬間、私の部屋の中が写った。その様子を見て、声が出なくなる。
部屋の中は霊だらけ。男女関係ない。浮いている者もいれば、部屋の隅にうずくまっている者も。
「な……に……。これ……」
「解ったか? 結界が破られてる。元々ここは、霊道(れいどう)なんだよ。霊の通り道。けど、結界のせいで通れなかった。クソぉっ。オレの結界を……」
よく見ると、壁のお札が無い。剥がされたと言うよりは、燃やされたように一部が黒く残っている。
「どうすれば、いいの……? こんなに、たくさん……。女性も、いるし……」
「引っ越し作業は、全部オレに任せろ。取り敢えずお前は、ウチと大学以外出歩くな。バイトも辞めろ」
「うん……」
こんな物を見せられては、彼の言う通りにするしかない。
響揮はもう1度呪文を唱えながら鏡を火にかざし、元の位置に収めた。