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悦楽にて成仏して頂きます
第6章 新生活
シャワーを浴びて部屋に戻ろうとすると、廊下に響揮が立っている。こんなに早く戻るのは珍しい。
居候でも異性と同じマンションに住む為、新しく買ったバスローブ姿。以前のマンションと違って、ここならバスローブもよく似合う気がする。
「オツカレ。ホラ」
響揮が差し出した、封筒を受け取った。
「また、響揮への依頼だったの?」
「まあな。社にいたから、気配だけは感じた」
私がセックスするのは、いつも響揮に依頼された霊ばかり。
「ねぇ、響揮。霊、わざと送ってない?」
「まあまあ。腹減ったろう。着替えたら下に行こうぜ」
マンションの1階には、洒落(しゃれ)たレストランがある。私のような大学生では、中々入りづらい。
「早く着替えろよ。リビングで待ってるからな」
何となく、響揮にごまかされた感じがする。
いくら有名な祈祷師とはいえ、全ての依頼が彼に入るはずはない。それなりの祈祷料は頂いているが、助手と言うより子分のような気持ち。
髪を乾かしてから着替えてリビングへ行くと、響揮が思い切りテーブルを叩いていた。
リビングの空気が重い。
「クソぉっ!?」
琥珀もソファーに立ち、全身の毛を逆立てている。
「どうしたの?」
「結界が弱まってるから張り直したら、またすぐ弱まる……」
響揮はベランダへ出ると、下を眺めている。私も後を追って下を見てみた。
「桜火……」
響揮が、そう呟いたのが聞えた。
店舗などが明るいお蔭で5階からでも見えたのは、確かにあの少年。一度振り返ってから歩いて行く、桜火の姿。
「何でもねえから入れよ。もう一度、張り直すから」
リビングへ戻った響揮が呪文を唱えると、私にも解るくらい部屋の空気が変わる。
「これで大丈夫だ。行くぞ。腹減ったー」
琥珀にエサを出してから、彼に着いて部屋を出た。
食事を終えて部屋へ戻ると、響揮はだらしなくソファーに横たわる。
「喰った喰ったー」
ここに移ってから、私はバイトを辞めた。それは、響揮の勧めでもあったから。大学へ行く以外、出来るだけ外出は避けろとも言われた。
「なあ。お前、今カレシはいるのか?」