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悦楽にて成仏して頂きます
第6章  新生活


「作れるわけないでしょう? 霊としなくちゃ、いけないんだから。相手からすれば、浮気になっちゃう」
「そっか……」
 響揮は、何か考えるように天井を見ている。
「それが、どうしたの?」
「何でもねえ。シャワー浴びたら、社行くかな」
 社での響揮の装束は、見事な物。普段より数倍も格好良く見える。元々顔立ちはいいから、神聖さが加わってそう感じるのだろう。普段からああなら、もっといいのに。
「いってらっしゃい。私は勉強があるから、霊を送らないでよ」
「さてと。シャワー、シャワー」
 返事をせずに、響揮はバスルームへ行ってしまう。仕方なく私は、自分の部屋へ戻った。
 パソコンで調べものをしていた時、ふと桜火の事を思い出して調べてみる。いくつか店の名前などもあったが、“祈祷師”というものを開いた。
 桜火の写真と、プロフィールが載っている。
 生年月日から計算すると、まだ15歳の高校1年生。大学にいて違和感を覚えたのは、そのせいだ。
 陰陽師の子孫だとあるが、仕事の依頼は受けていないようだ。
 このサイト自体、桜火自身が作ったものではなさそうだった。何枚かの写真も、隠し撮りしたような物を使っている。付属の掲示板には、彼を“格好いい”と称賛する書き込みばかリ。
 桜火が、響揮に敵意を持っていたようなのが気になる。そしてさっき、結界を弱めたのは彼の仕業なのだろうか。
「あっ!」
 1人で声を上げてしまった。
 私のマンション。響揮が結界を張ったのに、その結界も弱まりお札が燃やされたようになっていた。
 もしかして、それも桜火の仕業だったとしたら……。
 それならば、余計にここを離れるわけにはいかない。響揮は桜火の存在に気付き、私をここへ住まわせたのだろう。
 桜火。
 いったい何者なのだろう。
 広い大学の中で、私を見つけるのだって大変なはずだ。でも強い能力者なら、居場所も解ると響輝から聞いた事がある。
 勉強に集中出来ない。
 理由は解らないが、命を狙われているのなら、暴走した霊より恐ろしい存在。
 私はパソコンを閉じ、ベッドに転がった。


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