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悦楽にて成仏して頂きます
第7章 桜火
シャワーを浴びてから部屋着に着替え、リビングのソファーへ座る。
響揮と桜火は、やはり知り合いだった。
理由は解らないがお互いに敵対心を持ち、それは桜火の方が強い気がする。
「注入の、儀……」
何となく呟いてしまった。
桜火は、何故それに拘っているのだろう。今まで響揮からは、一度も聞いていない。
さっきは、桜火が来てくれなければ危なかった。取り込まれるまでに、響揮が間に合ったかどうか解らない。
桜火の掌からは、赤い光が出ていた。いつも響揮が出す光は、緑色なのに。琥珀は琥珀色。何か違いがあるのだろうか。
桜火に礼を言わなくてはと思うが、2人は響揮の部屋。何を話しているのかは想像もつかないし、そこへ入って行く勇気は無い。
小1時間が経ち、2人がリビングに現れた。玄関への通り道だから、当たり前かもしれない。
「楓さん。また会おうね」
「楓には、これ以上近付くな!」
「僕が来なかったら、楓さんは取り込まれてたよ?」
桜火は笑みを浮かべているが、響揮は渋い表情。
「とにかく帰れ!」
響揮の言葉の後、私はソファーから立ち上がった。
「あの。桜火。さっきは、ありがとう……」
「ほらね。楓さんだって、ちゃんと解ってるよ。取り込まれそうになったの」
「いいから帰れ! 2度と来るなよ!」
響揮に背中を押されるように、桜火は玄関へと向かう。少しして、ドアの閉まる音と、初めて聞くカシャリという音。
戻って来た響揮が、引き出しから出したカードを差し出してくる。
「カードキー。特殊な結界で、特殊能力のねえヤツは入れねえ。けど、これからは桜火対策に、鍵を掛けるから」
頷いて、それを受け取った。
「悪かったな……。遅れて……」
「そんな事ないよ。響揮はちゃんと、急いで来てくれたんでしょう?」
響揮は、無言でコーヒーメーカーのスイッチを入れる。
「辞めたいか?」
「え?」
「セックスでの除霊なんて、辞めたいか?」
私は、何も言えなくなってしまう。
確かにセックスで除霊するなど、出来ればしたくない。でもセックス関連で彷徨う霊がいれば、助ける方法は他に無いと響揮から聞いている。
暫くリビングには、コーヒーメーカーが動く音だけ。