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悦楽にて成仏して頂きます
第7章 桜火
「兄弟なのに。仲良くは、出来ないの?」
「ホントなら、あいつが、社を継ぐべきなんだ……」
「響揮……」
落ち込んだような響揮に、ポケットから切れた翡翠のネックレスを出した。
「あのね。これ。霊に、切られたの。その後投げられて……」
「お前の力が、急激に弱まるのを感じた……」
響揮は、ネックレスをジッと見つめている。
「だから響揮は、急いで来てくれたんだよね。私を心配して」
「ああ……」
また何かをしに来たのか、桜火はたまたま近くにいた。響揮はいつも、私の事を考えていてくれる。
「琥珀も、気になる。嘘みたいだけど、本当に、特殊能力があるから……」
さっき琥珀は、ずっとドアの外で鳴いていた。桜火が来るのが解り、霊の居場所を知らせようとしたのだろう。桜火には私がどの部屋にいるか、すぐには解らないかもしれない。
「琥珀は仔猫の頃、社の前に座ってた。守護は琥珀で、弱い能力があるのはすぐに解った。だから、社に入れて修行させた」
「猫が、修行?」
「ああ。琥珀はいつも焚火の前に座って、大人しくしてる。今は立派な相棒だ」
私の方が、琥珀より能力が劣っている。そう思うと、悔しいような不思議な思い。
「それと……。注入の、儀に、ついて。桜火から、内容は聞いたけど……」
「前に、お前に、言ったよな。100体と、ヤらなきゃ、ムリな除霊が、あるって……」
「うん」
響揮は、ゆっくりとコーヒーを飲んでから話し出す。
「注入の儀の後、儀式を繰り返せば、何体を除霊したかなんて、関係なくなる。ちょっと、問題のある、霊がいるんだ。浮遊霊とかに、なるまで、後3ヶ月切ってて……。その時が近付くほど、能力は強くなる」
「だから、毎日社に行ってたの? 遅くまで」
響揮が軽く頷く。
「ハッキリ、言う、けど……」
はっきり、と言った割には歯切れも悪く、響揮は窓の方を向いている。歯切れが悪いのは、少し前からも思っていた。
「お前……。いや、何でもねえ……」
そのまま響揮は、黙ってしまう。
「注入の儀でしょう? それをすれば、その霊を助けられるんだよね?」
「ああ。この話は、忘れてくれ」
響揮が、ソファーから立ち上がる。