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悦楽にて成仏して頂きます
第7章 桜火
「あれ、本気だよ。恋人になって欲しいって、言ったの」
確かに周りは多くの学生で騒がしく、誰も他人の話など聞いていない。
「まだ15歳でしょう? 子供が、何言ってんの?」
「知ってたんだ。響揮に聞いたか、サイトでも見た? あれは、僕のファンが作ったんだけどね」
やはりそうだったのか。仕事を請け負っていない桜火に、特別なサイトなど必要ない。
「それより。響揮のマンションの結界を弱めたの、あなたでしょう? 後、私のマンションの結界と、お札も」
私の言葉に、桜火は笑っている。
「解っちゃった? まあ。響揮の結界を弱めるなんて、今の僕くらいにしか出来ないけどね」
「どうして仲良くしないの? 兄弟なのに……」
「響揮に聞いたんだね。兄弟だから、だよ。遅く生まれただけで、社を継ぐ権利が無いなんて。能力は、僕の方が上なのに」
それに関して、私は何も言えなかった。
今時、長男が家を継ぐとは限らない。それが祈祷師の家系となれば、私には解らない世界だ。
響揮も、桜火の方が能力は高いと言っていた。
「あの社は、絶対に僕が継ぐ」
「だったら、きちんと話し合うとか。家族も含めて。勝手に結界を弱めるなんて、卑怯だと思う……」
「響揮とは、3年くらい前から何度も話し合った! 響揮は最後には、必ず黙ってしまうんだ!」
桜火の体からは、怒りの赤いオーラが出ていた。彼が掌から出すのは、赤い光。それと同じなのだろう。
「響揮とは、話にならない! だから、奪うって決めたんだ!」
大きな声に、さすがに隣の席の高校生達がこっちを向く。
「桜火。落ち着いて……」
「ごめん。でも、あの社は、絶対に譲らない」
そう言うと、桜火はレシートを持って席を立つ。
「待って」
出来るだけ小声で言い、会計をした桜火に追いついた。ファミレスの階段を降りた所で、桜火の腕を掴む。
「訊きたい事があるの」
私の腕を軽く振り払った桜火は、駐車場の隅へ行く。
「何? 響揮についてなら、これ以上……」
「どうして私に、恋人になってなんて言うの?」
桜火の言葉を遮って言った。
「出会ったばかりで、私の事、まだ殆ど知らないでしょう?」
「能力の強い、後継ぎが欲しいから」
「え?」