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悦楽にて成仏して頂きます
第7章  桜火


 赤いオーラの消えた桜火が、笑顔を見せる。
「能力の強い女性だから……。僕達の子供なら、絶対に高い能力を持つ子になる」
「その為、だけに?」
 桜火が頷く。
「能力は、僕達にとって一番大切な物だから。楓さんなら元々能力もあるから、注入の儀をすれば、もっと強くなる。それに可愛いし、スタイルもいいし。でも、その為にも、社が必要なんだ」
 霊から助けてもらった時に、全裸を見られている。でも桜火にとってとにかく大切なのは、特殊能力の方なのだろう。
 ある意味、特殊能力を持っていれば誰でもいい。がっかりしたわけじゃなく、その考え方が少し怖いと思った。
「僕は生まれつき、心臓が弱いんだ。だから早く社を継いで、早く跡取りも欲しい」
 真剣な面持ちの桜火に、溜息を飲み込んだ。
 15歳の桜火なりに、きちんとした考えは持っているのだろう。でも勿論、私にその気は無い。
「楓さん。ちゃんと考えた方がいいよ。僕と響揮、どっちに付くのが得か。じゃあね」
 そう言うと、桜火は走って行ってしまった。
 恋愛や結婚は、損得じゃない。それに私は、響揮の恋人じゃなくてただの助手。一緒に住み始めたから、桜火は勘違いしているのだろうか。そんな事になったのも、桜火が私のマンションの結界を解いたせいなのに。
 それよりも、これからの2人が心配だった。
 桜火は今後もまた、結界を弱めたりしてくるのだろうか。もしかしたら、私の知らないそれ以上の事も。
 今日桜火に会ったのは、出来る限り響揮に内緒にしておこう。
 そう考えながら、私も駐車場を出た。


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