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悦楽にて成仏して頂きます
第8章 注入の儀
「来てるな……」
響揮が言うより先に、琥珀がドアの方へ行って「ギャアー!」と鳴いていた。
「うん……」
私にもすぐに解った。ドアの外に、霊が来ている。私とセックスをしに来た霊。
「悪いけど、待っててもらうか。お前も、疲れてる、だろうしな……」
そんな風に言われると、さっきのセックスを思い出してしまう。恥ずかしくて火照った頬に、ペットボトルを当てた。
あんなに乱れたのは、初めてかもしれない。それも響揮相手に。さっきまでセックスをしていた相手とこうして話しているのが、不思議にも思えた。
響揮も平然を装ってはいるが、内心は照れが残っているよう。
「社で儀式を繰り返せば、そのうち、霊とヤらなくても、成仏させられるようになるから」
「それって、どれくらいかかるの?」
霊とセックスしなくていいなら、私としては大歓迎。1日に何体来ても大丈夫。その儀式というものを受ければ、私も本物の祈祷師になるのだろうか。
今までは、見えていただけといってもいいだろう。そして成仏させる方法は、セックスをするしかなかった。
「最低でも、2、3週間以上。開花したら、左手をかざせば霊が止められる。その間に刺せば、成仏もさせられる」
2人とも話が逸れたのに気付き、少しの間沈黙した。
「ここからは、本当の事を話すから」
「うん……」
「まず。桜火に、社は、絶対に譲れねえ」
響揮は真剣な面持ち。
でもそれは、響揮の希望でしかない。桜火も社を手に入れたいと言っていた。何とか、2人が上手くいく方法は無いのだろうか。
「響揮、でも……」
「譲りたくても、桜火には、譲れねえんだ」
「響揮が、長男だから?」
俯くと、響揮は首を振った。
「桜火は、いねえ……」
「えっ? どういう意味?」
響揮が深い溜息をつく。
「桜火は……」
そのまま黙ってしまい、俯いたままの響揮を暫く見つめていた。
「桜火は、生まれつき心臓が悪くて、入退院を繰り返してた。病院で一所懸命勉強して、旺蘭学院に受かったのに……」
また深い溜息をつき、決心したように響揮が顔を上げる。