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悦楽にて成仏して頂きます
第8章  注入の儀


「桜火は……。3年前に、死んだ。けどそれに気付かず、今、彷徨ってる……」
 信じられない。私は霊と人間の見分けがつくのに。桜火とは、何度か会っている。一緒にお茶までしたのに。
「う……そ……」
 響揮が首を振る。
「生きてれば、あいつは今18歳になってる。オレと、7つ離れてるから」
「だって。私の友達にも、見えてたんだよ? 美少年とか言ったり、制服が解ったり……」
「長く、霊でいたせいだ。そのせいで、桜火の能力が、強くなってる」
 それでも、にわかには信じられない。
「桜火を、助けてくれ。あいつが、浮遊霊や地縛霊になるのを見たくねえんだ……」
 響揮が深く頭を下げる。
 その様子を見ていると、桜火が亡くなっているのは本当らしい。
「あいつは、走るのも禁止されてて。だから子供の頃、一緒に遊べなかったのもある。桜火は社に未練を持ってたから、成仏出来ねえんだ……」
 こんなに苦しそうな響揮を、初めて見た。
「オレが術を出せば、桜火も対抗してくる。そしたら、オレが負ける。俺はどうなっても構わねえけど、由緒あるあの社が、霊の……。桜火の、住処(すみか)になる。だから、お前の力を貸して欲しいんだ。頼む……」
「私に、何が出来るのか、まだ、解らないけど……。響揮の言う通りに、やってみる」
「ありがとな……」
 響揮は、3年もそんな苦しみを抱えていた。
 誰にも言えなかったのは、私に霊が見えていたのと同じ。響揮に会ったのは1年以上前なのに、全く気付けなかったのが悔しい。
「また桜火に会ったら、知らねえ振りを、してくれ」
「うん……」
 響揮の悲しみが解り、琥珀が「ニャーン」と慰めるように膝に載る。
「その時まで、桜火とは、普通に接して、欲しい……」
 その時というのは、桜火を成仏させる時だろう。
 3ヶ月切っていると解っていても、どうしてかそれがずっと先ならいいのにと思ってしまった。
 その時チャイムの音がして、響揮がインターフォンに出る。
「あっ!」
 響揮の声に驚いて、私も彼の近くへ行った。


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