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悦楽にて成仏して頂きます
第9章 琴音
「琴音。今日、出かけるか? 色々案内してやるよ」
「嬉しいです。響揮さんと一緒なら、デートですね」
琴音が嬉しそうに言う。
昨夜は琴音について、「困った」を連発していたのに。響揮は、もう諦めたのだろうか。
「琴音ちゃんて、どこから来たの?」
私の素朴な疑問。
「神奈川県です。生まれたのは、福岡でした」
「じゃあ響揮も、生まれは福岡?」
「ああ……」
それだけ言って、響揮は朝食を続けている。
「物心ついた頃には、神奈川県だったので。ねぇ、響揮さん」
「ああ……」
響揮はそれだけしか答えない。
そのまま朝食を終え、響揮はすぐ部屋へ戻る。琴音に片付けを手伝うと言ったが、丁寧に断られてしまった。
仕方なく、響揮の部屋へ行ってみる。
ノックをすると、すぐに彼が出てきた。
「何だよ」
「あんなに困ってたのに。デートなんて、どうしたの?」
小声で訊く。
「入れよ」
仕方ないという感じで、部屋に入れてくれた。
「デートじゃねえよ。琴音払いしてやるんだからな」
「琴音払い?」
「お前は除霊のシゴトがあるだろ? 夕方には戻るから、それまでにヤっとけよ。霊が来てんだろ」
そういう意味か。
セックスでしか成仏出来ない霊は溜っていると、前に聞いた。他の霊は響揮が社で経を唱え、成仏させらる。
「解った」
「じゃ、一度社に行ってくるから。琴音には、準備をして待ってろって、言っとけよ」
響揮はすぐに部屋を出て、玄関へ行く。
「響揮さん。お出かけですか?」
「ああ」
琴音の言葉も振り切り、急いでいるようだ。すぐに出て行ってしまった。
「今日のデートは、中止でしょうか……」
響揮から言われた旨を伝えると、琴音がホッとした面持ちになる。「支度をしておきます」と言って、すぐ部屋に入ってしまった。
私自身でも、何か方法を考えなければ。
でもまずは、今いる霊の除霊。
正面のソファーで眠っていた琥珀も、ジッと玄関の方を見ている。
1時間ほどして戻って来た響揮は、すぐ部屋へ行ってしまった。出てきた彼は、いつものチャラい格好。
2人が出かける時に玄関を開けると、昨日からいる、まだ少年のような霊が立っていた。