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悦楽にて成仏して頂きます
第9章 琴音
やはり、そういう仲だったのか。
それ以上は訊けなくなってしまった。ホテルなんて、する事は決まっている。
「私、着替えてきますね。部屋着も、買って頂いたので」
軽く頭を下げてから、琴音は部屋へ行く。
深い仲なら、響揮も昨夜そう言ってくれればよかったのに。
困っていたのは、やはり私の除霊についてだろう。私がここにいなければ、ホテルへなど行く必要もない。
「あれ? 琥珀?」
ソファーに琥珀がいない。見ると、もうエサの定位置で待っている。
「はいはい、ご飯ね」
琥珀にエサをやってから部屋へ戻ろうとすると、琴音がドアの隙間から顔を出す。
「楓さん……。これで、よろしいのでしょうか……?」
ゆっくりと出てきた琴美が着ていたのは、人気ブランドの部屋着。私の部屋着が何枚買えるだろうという値段。
パイル地でも、半袖と短パンになっていて可愛い。
「似合うよ。可愛い」
「そうですか? 柄や色違いで5つも買って頂いて。でも……。露出が、多すぎませんか……?」
「それくらい、普通だよ? 私よく、Tシャツと短パンで寝るもん」
今も同じ格好。結局、このまま寝てしまうという意味。
「慣れないと、いけませんね。では、お休みなさい」
「お休みー」
とは言ったが、まだ20時。
響揮は休むと言って部屋に戻ったきり。私も結局、部屋へ戻るしかなかった。
ベッドに仰向けになり、溜息をつく。
響揮が、女の子向けの人気ブランドを知っているなんて。だったら、私にも買ってきてくれてもいいのに。と、理不尽な事を考えてしまった。
私と響揮は、ただの子弟関係。琴音は婚約者。扱いが違って当然だろう。
もう寝てしまいたかったが、さっきソファーで眠ったせいで寝られない。こんな時は、ゆっくり湯船に浸かるのもいいだろう。
そう思って廊下へ出ると、響揮の部屋のドアが開いていた。
「おいっ、琴音っ! 大丈夫かっ?」
突っ立ったままでいると、琴音を抱きかかえた響揮が出てくる。琴音は意識が無いようだ。
「わりい。琴音の部屋のドア、開けてくれ」
「う、うん」
畳んではあるが、部屋の中は服だらけ。
響揮が琴音をベッドに寝かせた後、私はケットを掛けた。