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悦楽にて成仏して頂きます
第10章 水の守護
響揮は、最低でも2、3週間以上と言っていた。
彼が、装束のまま出てくる。
「オレは、もう少し祈祷してく。お前と琥珀は帰れ」
「うん」
「元の装束と数珠は、ここに置いてけ。短剣だけは、まだ必要だからな。後、少しでも早く、お前に合った数珠を探すから」
琥珀は響揮の言葉が解ったらしく、バッグには入らなかった。
私は、首を傾げて響揮を見る。
「数珠?」
「今まで、お前が使ってたのは翡翠だ。もう、お前の守護にはならねえ。けど今は、短剣だけあれば大丈夫だ」
数珠は少しでも身を守る為と、響揮が祈祷してくれた翡翠の物。まだ実感は無いが、私の守護は水。それに合った数珠が必要なのだろう。
「ついでに、霊を行かせるからな」
「明日じゃ、駄目?」
「送っとくけど、除霊は近いうちでいいぞ」
今日はもう疲れた。これからなら、眠れそうだ。
箱に入った短刀だけを持ち、琥珀と一緒に社を出る。
「琥珀、待ってよ。そんなに元気なら、来る時も走ればいいじゃない」
階段の終わり間際には、もう霊がいた。
琥珀は立ち止まって霊をジッと見ているが、威嚇はしない。私も琥珀の横に立ち、霊へと左の掌を差し出して成仏を願ってみた。
何も起こらない。
霊はフワフワと揺れながら、私を見ているだけ。
「まだ駄目か……」
さっきのような儀式を続ければ、いつか霊を止められる。響揮もそう言っていた。
20代。私より少し上くらいだろうか。その年齢で死ねば、セックスに未練があってもおかしくはない。
階段を降りると、霊が着いて来る。結界を越えたのだろう。社の結界が、ここまで届いているのにも驚いた。
桜火を倒す。
それが、私に与えられた使命。
少し生意気なところもあるが、私にとっては弟のような存在。実際に、響揮の弟でもある。
セックスでしか、霊を救えなかった私。それが注入の儀を受け、近いうちに桜火と戦うなんて。
溜息を殺しながらマンションへ入ると、着いて来た霊は玄関の前。
琥珀はソファーで丸くなり、部屋着に着替えた私は、自分のベッドへ転がった。
注入の儀とは言え、響揮とセックスしたなどまだ信じられない。
響揮と出会ってからの事を思い出しながら、私はいつの間にか眠っていた。