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悦楽にて成仏して頂きます
第10章 水の守護
「はあっ」
私と同じように、彼も息を乱している。
彼はセックスに未練があり、成仏出来ない霊。それさえも、頭から消えそうになる。
「ヤぁっ、んっ、イイっ、あぁっ、んんっ」
もう我慢の限界。
シーツから手を離し、彼と自分を煽るように乳首を弄った。彼にも、一緒にイって欲しい。
「楓、さんっ……」
「イイっ、もっとぉっ、んんっ」
彼のグラインドが深く速くなり、私は本当に限界。
「ヤぁっ、ダ、メぇっ、あぁっ、んっ、イくぅっ! はぁっ……」
真っ白になる、頭の中。
イく時の締め付けで、彼も同時に放出したようだった。
私の横に転がって息を整えながら、彼が話し出す。
「俺のいた、所は、死の病棟って、患者の間で、噂になってた……」
まずい。
彼がまた、自分の死を思い出している。
「でも、あの病棟だから、死ぬんじゃなくて、死にそうだから、そこに移されるんだ。危篤になって、みんなICUに行って……。2度と戻って来なくて、病室が空く……」
「ねぇ……」
「だから、あの看護師さんは、あんな事、してくれたんだ……。凄く、真面目な人だったから、驚いたけど……。俺が、死ぬ前にって、思って、くれたんだろうなあ……」
彼の体が段々と白い光を帯びてきた。
怒ってはいない。話しているのは、ただの思い出。
「え……?」
色は薄いが、私の体が水色に包まれているのが解った。
「楓さん。ありがとう。俺、行かなくちゃ……」
彼は私をすり抜けてベッドを降り、白装束を着る。
「楓さんのお蔭で、行き先が解ったよ。本当に、ありがとう……」
それを聞いてから、全裸のままベッドで正座した。
彼は既に、強い光に包まれている。成仏の時が、来たのだろう。
「さようなら……」
それには答えず、目をつぶったまま手を合わせる。願っているのは、彼の成仏だけ。
少しして気配が消え、私は目を開けた。
彼の姿は、もう無い。
行き先……。
霊達のはっきりとした行き先は、私には解らない。今度響揮に訊いてみよう。
そんな事を考えながら、私はシャワーを浴びに行った。