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悦楽にて成仏して頂きます
第10章 水の守護
朝起きると、響揮から新しいメール。
“今晩帰らない”またそれだけ。
昨夜の霊のお蔭で、スッキリした。セックスの内容じゃなく、昔話をしながらも普通に成仏してくれた事に。
最近は、何故か暴走する霊が増えている。
若くして亡くなれば、色々な未練があっても仕方ない。でも、暴走されるのはやはり困る。
出来れば、短刀を使いたくない。暴走した霊とはいえ、突き刺すのは可哀そうな気がする。
嫌な気配を感じながらリビングへ行くと、琥珀は朝食の真っ最中。チラリと私を見たが、すぐ食事に専念。
「響揮は、今晩も帰って来ないんだから。仲良くしようよ」
そう言っても、琥珀は無視。
仕方ないと諦め、玄関を開ける。
「はあ…………」
玄関を開けると、白装束の霊が2体。複数など初めてだった。
響揮も、考えて送って欲しい。
「今日は勘弁して。明日と明後日まで待っててね。霊さん達」
そう言って、ドアを閉めた。
「楓さん? どうしました? 響揮さんが、お帰りですか?」
リビングへ戻ると、キッチンから琴音が来る。
「天気は、どう、かなって……。響揮は、今晩も帰らないって」
天気なら、窓から見れば早い。琴音が天然で助かった。
「そうなのですか……。朝食が、出来ています。どうぞ」
また、明らかに淋しそうな態度。
朝食を摂ってからは、ダラダラと過ごす。響揮がいなくては、儀式も出来ない。でも、たまにはこんな日もいいだろう。
毎食時間通りに摂り、真夜中に眠りについた。
「楓! 起きろっ!」
翌日、その声で目が覚めてリビングへ。
「外の霊はまだか?」
「ん……」
「あれは双子だから。一緒に送るしかなかった」
響揮がソファーへ座る。
「響揮さん、お帰りなさいませ」
大声のせいで、琴音もリビングに来た。
「修行の話をするから、琴音は部屋に行ってろよ」
「解りました。キッチンに、朝食がありますから。失礼します」
琴音が部屋へ入る。彼女には、聞かせたくない話なのだろう。
「お前、ピアス出来るよな?」
「うん。東京に来てから開けた」
響揮が差し出したのは、2つの箱。
開けて見ると、1つは水晶の数珠。もう1つは水晶のピアスとネックレスだった。
水晶だと解るのは、元々の能力のお蔭。
「こんな数珠、あるんだね……」