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悦楽にて成仏して頂きます
第10章 水の守護
「馴染みの店まで行って、すぐ取り寄せて貰った」
ピアスとネックレスもだが、水晶の数珠は結構な値段だろう。元私のマンションの家賃の半年分ほどだろうか……。
私は、恐る恐る数珠を手に取った。
「あ……」
直にパワー感じて驚く。冷たいだけの宝石のはずなのに、何故か温かみもある。
「凄いだろ? 俺が祈祷した、水の守護石だからな。桜火は、ルビーを持ってる。我が家は、生まれてすぐピアスを開けるから」
「水の、守護石……」
響揮の話は聞こえていたが、私は水晶の数珠の数珠などに感動していた。
「ありがとう、響揮」
真っ直ぐに響揮を見つめると、彼は視線を泳がせる。
「バカ……。桜火の、為でも、あるし。だからお前も、ちゃんと、儀式を、しろよ……」
響揮に意外とピュアなところがあるのは、注入の儀の時に解っていた。
「あっ。琥珀のもあるぞ。ホラ」
もう1つ小さめの箱を出すと、中には琥珀用の首輪。ブレスレットのようで、ゴムで繋がれている。
それを着けてもらった琥珀が、「ニャー!!」と雄叫びのように鳴く。
「オレは、まだ行くトコがあるから。今晩も、帰れねえかも。琥珀をよろしくな」
「ニャー!」
「わりい。琥珀、楓をよろしくな」
まるで、琥珀が私の世話をしているような言い方。エサやトイレの世話をしているのは、私の方なのに。今は、琴音の方が多いが……。
「じゃあな。あっ、ネックレスは、いつも着けてろよ」
そう言うと響揮は、急いで出て行ってしまった。この数日響揮が忙しそうにしているのは、私の為だろう。勿論、桜火の為でもあるが。
部屋に戻ると、珍しく琥珀が着いて来る。そのままベッドに乗り、丸くなってしまった。
響揮に言われた通り、私の世話をしているつもりだろうか。
ネットで水晶について調べてみると、思っていたよりずっと高価。
私の元のマンションの家賃は、八万ちょっと。3つの合計だと、2年分の家賃でも足りない。
じゃんけん。
響揮が言っていた言葉を、思い出した。
桜火が生きていたら、響揮は社を桜火に託しただろう。亡くなってしまった今、桜火に勝てるのは能力が開花した後の私。
桜火を救えるのは、私しかいない。そう考えながら、机に俯せた。