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悦楽にて成仏して頂きます
第11章 琥珀の力
反論が出来ない。
「1日何時間か、歩く練習をしとけ。社に来る時は、必ず持って来いよ」
「解った……」
儀式に加え、裳で歩く練習。それに除霊。私には、課題が多すぎる。
さっき私が数珠を使っても駄目だったのに、琥珀は首輪で霊を止める能力を発揮した。
素質が違うのだろうか。
でも私は、響揮に街でスカウトされた。それは、特殊能力が高いからだろう。そう思い、自分を勇気付ける。
「社に行くけど、来るか?」
「行くっ!」
「修行ですか。頑張ってくださいね」
今の私には、社での儀式が必要。
裳は自分で何とか慣れるしかないが、儀式は響揮がいないと出来ない。
「数珠とピアスと短刀を持って来い。別のバッグもあるだろ?」
「うん。解った」
私は部屋へ向かう。
「ネックレスは着けてるな?」
「着けてるー!」
裳を脱いで着替えると、クローゼットから以前使っていたリュックを取り出した。
「ニャー」
琥珀が、ドアの隙間から入ってくる。
響揮から、琥珀は4キロくらいだと聞いた。毎回4キロ以上をバッグに入れるなんて、重くて仕方がない。
でも琥珀は、命の恩人でもある。さっき琥珀がいなかったら、私は霊に取り込まれていた。響揮が、ギリギリ間に合ったかどうか。
「入るの?」
「ニャー」
道具を掻き分け、琥珀がリュックの中に入る。
バッグよりもリュックの方が、まだ楽な重さだろう。
「琥珀、背負うよ。よいしょっ」
「いってらっしゃいませ」
琴音の丁寧なお辞儀に送られ、マンションを出た。
今回裳の箱は響揮が運んでくれたが、この先は私が持ち運びしなければならない。私の身長近くある箱だが、マンションで、裳で歩く練習をしなければ。
社への階段の途中、響揮が振り向かずに口を開く。
「さっきお前は、術を試したのか?」
「うん。数珠も着けて、掌を向けた。でも、全然効かなくて……」
「大丈夫だ。この先儀式を続ければ、左手から強い術が出るようになる」
本当に、そうなればいいのだが。
社が見えてくる。
「ねぇ、響揮。どうして、左手なの? 両手の方が、強そうなのに」
「言ってなかったっけ? 神眼の目(しんがんのめ)について」
「シン、ガン、ノメ?」
響揮は、社の前で足を止めた。