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悦楽にて成仏して頂きます
第12章 神眼の目
「神眼の目は、神様の神に、眼球の眼。目は、簡単な目」
「ん……」
響揮は社の鍵を開けて中に入ると、太いろうそくに火を着ける。
「左手の親指の、第一関節。そこに、目みたいな手相があるだろ?」
「目? これ?」
確かに目のような丸いシワはあるが、手相に興味が無い私にはピンとこない。
「右は線だろ? その方がいい」
右の親指を見てみた。
「うん。右は一本線だ」
左右で手相がこんなに違うなんて、本当に興味が無くて気付かなかったまま。
「神眼の目を持つ者は、生まれつき特殊能力が高い。けど、それを使わねえまま幼少期を過ごすと、能力はなくなっちまう」
幼い頃から霊が見えていたのは、このせいなのだろう。そして私は、その霊達と遊んでいた。話さなくなったものの、霊は見え続けている。
全て、この神眼の目のせいなのか……。
「右手にあっても、意味ねえんだ。利き手は関係なく、左手の親指。目が大きいほど、強い霊力が生まれる」
「ん? 大きくないかも?」
ろうそくに近付けると、響揮が覗き込んで来た。
「それだけあれば充分。しっかり目が開いてる。この先の儀式で、もっと大きな目になるよ」
「大きな、神眼の目……」
「着替えてくる。お前も裳に着替えろ。前のバッグの中身は、もういらねえよな」
響揮が視線で差したのは、置いていった、以前の巫女のような装束などが入ったバッグ。
隅にあったそれを、バッグごと響揮に渡した。
響揮は、それを持って奥へ行ってしまう。私もさっき教えて貰ったばかりだから、何とか裳に着替えられた。
社の扉を、ノックする音。
「はいっ。ちょっと、お待ちください」
つい応えてしまった。
「響揮?」
奥の扉をノックしてから、ゆっくりと開けてみる。
そこは表より広い部屋。
入った瞬間、軽い眩暈(めまい)に襲われた。
「どした? 大丈夫か?」
あまりにも強すぎるパワー。そうとしか表現出来ない。
「ん。平気……。誰か、来てるよ」
「依頼者だろ。霊障のせいで、少しだけ悪い気がある。2人だな。そこに、座布団がある。お茶も淹れられるな? 茶葉と用具は戸棚だ」
人数まで解るなんて……。
「うん……」
段々と、眩暈が消えて行く。