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悦楽にて成仏して頂きます
第12章 神眼の目
リビングには、「買い物に行って参ります」と琴音のメモ。時間も書いてあり、私が戻る5分ほど前に出ている。
「ねぇ、琥珀。どう思う? セックスでの除霊……」
琥珀はエサを食べ終え、ソファーに横たわって前足を舐めていた。
「家族と、霊の為なんだよね? でも、何かね。霊に悪い気がして」
琥珀は、相変わらず知らん顔。
童貞でも、現世に好きな人がいたかもしれない。恋人がいたなら尚更。
私は人形でいいと思っても、霊はどう感じているのだろう。何となく、罪悪感を覚える。
大学の夏休みは暇。みんなはバイトに励んでいて、去年は私もそうだった。でも今は危険だからと、響揮にバイトを禁止されている。
バイトをしないのは不自然だから、友達には、小学生の女の子の家庭教師をやっていると話した。ここに越して来たのは、まだ親にも連絡していない。
元々両親は、特に父親は東京に出るのを反対していた。
兄は地元の大学を出て、地元で就職。私にも地元を勧めていたが、東京に住みたかったのが本当の理由。
「あっ。写メ撮っとこう」
スマホで左手の親指を写しておく。
儀式を繰り返せば、この神眼の目が大きくなると響揮が言っていた。
「え? 何……?」
私が呟くと同時に、琥珀が起きて「ギャアー!」と鳴く。
部屋の空気が変わった。
匂いなどはしないが、段々と淀んでくる感じ。琥珀は玄関の方へ行ってしまう。
その時、チャイムが鳴った。
「ギャー!」
「はい……」
「楓さん。入れてくれる?」
インターフォンの画面に映ったのは、桜火の姿。
「鍵がかかってたら、さすがの僕も入れないよ」
「今、響揮はいないから……」
「知ってるよ。社でしょう?」
それが解っていて、なぜ桜火は来たのだろう。そしてこの空気は、桜火が結界を弱めたせいだろうか。
邪魔になるからと、響揮は祈祷中にスマホの電源を切っている。
「ごめんね。ここは、響揮の家だから……」
インターフォンを切ったが、またチャイムの音。
琥珀は玄関で威嚇の鳴き声を上げているが、私は部屋へ走った。
ベッドでケットを被る。
頭痛がして来た。吐き気は無いが、全身がだるくて気分が悪い。
「助けて……。響揮……」