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悦楽にて成仏して頂きます
第12章  神眼の目


 私には結界の張り方が解らないから、頼れるのは響揮だけ。
「ニャー」
 心配したのか、琥珀がベッドに載って来た。
 琥珀が自由に出入り出来るように、少し前から、ドアを少し開けておく癖がついている。
 何故、琥珀は平気なのだろう。
 ふと思い、私は枕の下に置いた数珠を持った。それだけで、少し楽になった気がする。
 数珠を左手に持ち、ふらつく足でリビングへ行く。
 もうチャイムは鳴っていないが、ボタンを押して外の様子を見ると響揮と桜火がいる。
 少しして、桜火が響輝に掌を向けようとした。それよりも早く、響揮が桜火に左手を向ける。緑色の光で、桜火は固まったように動かない。その隙に、響揮は鍵を開けて入って来た。
「響揮……」
 私は、その場に座り込んでしまう。
「見てたのか?」
「うん……」
「あの術は、10秒ほど、相手を止められる。けど、攻撃にはならねえ」
 そう言うと響揮は、結界を張り直す。
 具合は元通りになり、ソファーに座った。
「桜火が術を出そうとしたから、先に術で止めたんだ。あいつには、何のダメージもねえ」
 響揮が、コーヒーメーカーのスイッチを入れる。
「桜火が来ても、絶対に入れるな。あいつは、お前の能力の目覚めに気付いてる。まだ弱いうちに、どうにかするつもりだ」
「どうにか、って?」
 響揮が深い息をつく。
「消される」
 それ以上響揮は何も言わなかったが、殺されるという意味だろう。
「安心しろ。オレが絶対に守る。この身を賭けてでも」
「響揮……」
 私は、それ以上の言葉が出なかった。
 琥珀は、ジッと響揮を見つめている。
 私が関わったのは、命懸けの事。
 でも桜火と響揮の為には、私の能力が必要。早く強くなって、桜火に全てを気付かせなければ。
「響揮。依頼が来てる霊、少ししたら送って」
「お前、明日って言ってたろ?」
「コーヒー飲んだら、除霊を始めるから。琴音ちゃんが戻ってきたら、絶対部屋に近付けないようにして。疲れて、寝てるって」
 私担当の霊は、早めに成仏させたい。その分夜は、社での修行をした方がいいだろう。
「だけど、今回も危なそうだから。オレは自分の部屋にいるよ」
「うん……」
 お互い無言で、出来上がったコーヒーを飲んだ。


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