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悦楽にて成仏して頂きます
第12章 神眼の目
「何、1人で事故ってんだよ」
彼の言葉に、嫌な予感。
「事故……」
今まで笑っていた彼が、難しい表情になった。
「あの事故、どうなったんだ?」
琥珀が立ち上がり、「ギャアー!」と鳴く。それは、危険の知らせ。
「横から、バイクが急に出てきたんだ……。向こうが、一時停止なのに」
彼の方を向き、枕に手の届く位置まで下がった。
「でも、フェラを……」
「あんなの、いつもやってる。オレは今、何をしてるんだ?」
琥珀は、部屋の隅で力を溜めているようだ。段々と、全身が琥珀色のオーラに包まれていく。
でも、私にも数珠がある。
響揮が、セックスした後なら水の力で霊を止められると言っていた。
枕の下から短刀と数珠を出すと、短刀を琥珀のへ弾かれてしまう。
「何だよ、それ!」
「ギャア!」
琥珀は避けたが、集中は途切れてしまったようだ。
「何だよ、あの猫。お前も、婚約者じゃねえ。でも、セックスしたいなら、もっとしてやろうか?」
彼が掴み掛かってくる。
「キャー!」
「ギャー! ギャー!」
私と琥珀が叫び声を上げた。
その直後、ドアが開く。
「響揮っ!」
「何だよ。3Pでもヤるのか?」
「楓、短刀を。早く!」
私が投げられた短刀を取りに行くと、響揮が霊に掌を向ける。
緑色の光。それに包まれた霊は、そのまま動かなくなった。
「早く刺せ!」
「うんっ。ここはお前の住む世界ではない! 退散せよっ!」
さやを外し、短刀を突き刺す。
「オレは、悪く、ない……」
そう言い残し、叫び声と共に彼は白い光の中へ消えて行った。
「響揮。ありがとう……。私達の声、聞こえたの?」
私達とは、私と琥珀の事。
そこで全裸なのに気付き、バスタオルを巻いた。
「感じた。ずっと、経を唱えてたから」
「最近の霊、暴走するのが多いの。何か、原因があるの?」
「桜火が……。いや。想像でしか、ねえから……」
暴走にも、桜火が関係しているかもしれないなんて……。
桜火の名前が出て、訊きたかった事を思い出す。
「シャワー浴びてくるから、リビングで待ってて。話があるの」
「何だよ」
「だから待ってて。琥珀。ありがとう」
琥珀の頭を撫でてから、私は浴室へ行った。