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エメラルドの鎮魂歌
第5章 青い鳥の唄
伊澤藍は大変に美しい少年だった。
少年には興味がない青山ですら、その生身の姿には思わず眼を見張り、思わず言葉を失ってしまったほどだ。

艶やかな長めの黒髪…真珠色の肌と西洋人形のように整った目鼻立ち、年齢にしてはすらりと高い背丈、ほっそりと長く美しい手足は篠宮家の血筋を感じさせた。
…しかし、その鋭く強い光を秘めた黒い瞳は…全く異質の野生の美しい猫に似た輝きを放っていたのだ。

「…あんた、誰?俺に何の用?」
鬼塚に連れてこられた藍は、青山と向かい合うなりにこりともせずに睨みつけた。
他人を警戒する様も、まるで野生動物のそれだ。

「…彼はどの程度、事情を知っているのだ?」
青山は郁未を振り返る。
不用意に話して藍を傷つけてはならないからだ。
「全てです。彼は全てを把握しております」
郁未の言葉に、先に反応したのは藍だった。
「何?また俺にあの家のことを聞きに来たの?
俺は知ってることは全部あいつに話した。
あんたに話すことなんかないからな!」
よほどトラウマがあるのだろう。
全身の毛を逆立て怒る野生猫のようだ。

鬼塚が藍の頭を軽く叩いた。
「おい、目上の人には丁寧な口の利き方をしろと常日頃から言っているだろう」
「あんたに言われても、説得力がないよ」
生意気そうにせせら笑う藍に、郁未が吹き出した。
「…言われちゃったね、鬼塚くん」
鬼塚がむっとしてそっぽを向いた。
「うるさい。本当に生意気な奴だな」
郁未の朗らかな笑いにその場の雰囲気が和らいだ。

青山はにこやかに笑いながら、藍に話しかけた。
「単刀直入に言おう。私は篠宮伯爵家の執事の八雲氏から君のことを託された。
時々様子を見て君を見守ってほしいと。
それで君に会いに来たのだ」

藍は、興味なさげに革張りのソファーにもたれかかる。
「あ、そ。でも別に俺はここの生活に満足してるし楽しいし、心配してくれなくてもいいよ、オッサン…痛っ!なんだよ、もう!」
鬼塚が無言で頭を小突いていた。
それを諌めながら、郁未が遠慮勝ちに尋ねた。
「…青山様、確かに今はもう藍にそれほどのお気遣いは無用かと存じますが…。
篠宮伯爵夫人もご自分の首を絞めるような真似はなさらないでしょうし…」
青山は足を組み替え、穏やかに微笑った。

「…私が案じているのはそちらではない。
…八雲氏だよ」




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