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エメラルドの鎮魂歌
第5章 青い鳥の唄
「…ここが俺たちの宿舎。女子寮は一階、男子寮は二階だ」
無愛想に案内しながら、藍はさっさと宿舎の階段を昇ってゆく。

青山は明るく開放的な…しかし重厚な造りの建物内を興味深く見渡した。
…説明を受けなければ、ここがとても身寄りのない子ども達が暮らす孤児院には見えない。
「まるでラグビーのハウスのようだ。
…懐かしい…」
「へ?」
階段を昇る足を止め、藍が振り返った。
青山はにっこりと笑いかける。
「私は英国のパブリックスクールに留学していたのだよ。
パブリックスクールにも色々な学校があってね。それぞれに特徴があるんだ。
私はラグビー校というところだったが、パブリックスクールの中でも取り分け自由で解放的な学校でね。
スポーツのラグビーの発祥の学校もある。
なんだか建物の雰囲気が似ていて…懐かしい気持ちになったのだよ」
青山の説明に藍は肩を竦めた。
「…へえ…。あんたも嵯峨先生と同じ、超ブルジョワなんだな。
嵯峨先生も少しの間、あっちの学校に留学してたんだって。それで英国の学校をモデルにここを建てたらしい」
「そうか。郁未くんは英国の学校の経験があるのだな」
…なるほどと青山は独りごちた。

いわゆる日本の粗末な孤児院と全く違う私立の学校並に整った施設と洒落た建築様式の建物は、パブリックスクールの校舎と寄宿舎を手本にしたのだと納得する。

「嵯峨先生は英語もフランス語もドイツ語も喋れるんだ。歴史も地理も科学も物理も数学も何でも教えられるし、優しいし素晴らしい先生なんだ」
廊下を先導しながら藍は自慢げに紹介する。
「…へえ…。郁未くんと鬼塚くんはどういう関係なんだ?…あまり接点が感じられないが…」

ちらりと青山を見遣ると、やや不機嫌そうに告げた。
「…鬼塚は、俺と同じ浅草長屋の出身さ。
嵯峨先生があの界隈でやくざ者に絡まれている時に助けたのが鬼塚で、それが縁でこの学院の経営に関わるようになったって…」
「なるほどね。だから彼は毛色が違ったのか」
青山の返事に藍は唇を尖らせる。
「…鬼塚も事情があってあの貧民窟にいたらしいけど…よく知らない。
あいつは俺が危ない目に遭っていた時、助けてくれたんだけど…あの強面だろ?てっきり一番ヤバい奴が出てきたと思って暴れたよ」

青山は陽気に笑った。
「君たちは実に愉快だな。
…さあ、では君の部屋に案内してくれたまえ」




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