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エメラルドの鎮魂歌
第5章 青い鳥の唄
その言葉通り、青山はそれから頻繁に藍の元を訪れるようになった。

郁未は遠慮勝ちにその真意を尋ねた。
「…青山様、藍を気に掛けていただけるのはとてもありがたいです。
何しろ公にされていないとは言え、篠宮伯爵夫人は藍を亡き者にしようとした方です。
私たちだけでは防ぎようがないこともあるでしょう。
青山様が藍を守って下さることは何よりも心強いです。
…けれど…その…」
口籠った郁未の言葉を代弁するように答えた。

「私が藍くんに邪まな気持ちを持っていないか…と案じているのだね?」
郁未は慌てて首を振った。
「い、いいえ。そんな…!」
青山は鷹揚に笑った。
片眉を跳ね上げて目元を細める笑い方は西洋人めいている。
青山の日本人離れした仕草は、外国生活の長さを物語っているように見えた。
「私が同性愛者なのは、有名な話だろうからね。案じて当然だ。ましてや藍くんはまだ十五歳の少年だ」

「失礼を承知で申し上げます。
藍は人目を惹く大変美しい容姿ゆえか、引き取りたいと申し出る篤志家が後を絶ちません。
本人が固く拒むのですべてお断りしておりますが、中には…藍が目的の方もいらっしゃるようです。
ですので、私たちはそういった目的の方には最初からきちんとお断りするようにしているのです」
物腰と話し口は柔らかであったが、毅然としたその姿勢は責任感溢れる孤児院の院長そのものであった。

世の中の孤児院での養子縁組は酷いものが多い。
最初から下働きをさせる目的で引き取る者が少なくなかった。
それはまだ良い方で、中には性的な欲求を満たすために見目好い少女や…少年までも引き取る悪どい人間もいたのだ。

それらを精査するのは中々に手間で、世間の孤児院では雑な審査のみで養子縁組するところが多々あったのだ。

郁未が運営する洗足学院では、審査が厳格で容易には引き取り手が決まらないことで有名だった。

鬼塚も
「こう言うことは慎重にしてしすぎることはない。
…子どもは物じゃない。俺たちが心から認められる家族でないと養子縁組は許可しない」
と、頑とした方針を貫いていたのだ。

「君たちのポリシーは立派だ。
安心してくれ。私は藍くんの個性や人柄…そして才能に関心があるのだ。君たちを失望させることはしないと、神に誓おう」

…しかし、直ぐに茶目っ気たっぷりにこう付け加えた。
「尤も私は無神論者だがね」

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