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エメラルドの鎮魂歌
第1章 罪と嘘のプレリュード
生まれた赤ん坊は和葉と名付けられた。
和葉は誕生したその日から、薫子に溺愛され寵愛されて育った。
大々的にお披露目をされ、篠宮伯爵家の事実上の後継者のような紹介をされた。
親族はもちろん、来客のすべてがこの琥珀色の髪と瞳の愛らしい赤ん坊に魅了された。

和葉は東翼の陽当たりの良い広い部屋で、乳母とナニーとナースに囲まれ、最大級に手厚く育児されて育った。

千賀子も自然と和葉の方に掛り切りになり、西翼の瑞葉の子ども部屋にはあまり足を運ばなくなった。
時折、済まなそうに八雲に
「…私が瑞葉さんのところに行くとお義母様に叱られるの。…瑞葉さんの悪口を聞くのも耐えられないし…。
八雲、瑞葉さんをお願いね。貴方だけが頼りなのよ」
縋るように懇願するのだった。

父親の征一郎は、たまさかに八雲に瑞葉の近況を尋ね、ばつが悪そうに
「…瑞葉を頼む。私の世話より、瑞葉を優先してくれ」
と言うのだった。
彼も息子の余りにも哀れな処遇に、心を痛めてはいたのだ。

しかし、瑞葉はもう寂しさを口にすることはなかった。
「…みずはには八雲がいてくれたらいいよ…」
そう言って、小さな身体で八雲にしがみつくのだった。

歩行訓練は、瑞葉が嫌がるようになったので次第に行わなくなった。
和葉が生まれる前には、なんとか自力で立つことができたのに、惜しいな…と思いながらも、八雲はそれ以上強制する気にはなれなかった。
「…それでは、八雲がいつでも瑞葉様をお抱きいたしますよ。
いつでもお呼びください。
瑞葉様がいらっしゃりたいところにお連れいたします」
瑞葉はその言葉を聞いて、蕩けるような甘い笑顔を浮かべ、八雲に抱きついた。

瑞葉が病弱なのは変わらずであったが、具合が悪くなる度に八雲は鬼気迫るような表情で、献身的に寝ずに看病をした。
そのきめ細やかな看護は、主治医すら舌を巻くほどであった。
そのお陰で瑞葉は、主治医が見立てた十歳まで育つのは難しいとされた年齢を超えて成長していった。

…二人は広い屋敷の中、限られた空間で静かに…しかし濃密に時を過ごした。

…そうして瑞葉は、十四歳の春を迎えたのだった。
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