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エメラルドの鎮魂歌
第1章 罪と嘘のプレリュード
「八雲!八雲!兄様のところにいくの?」
八雲が瑞葉の薬を携え大階段を昇りかけた時、背後から軽い足音が聞こえた。

振り返ると、瑞葉の弟 和葉がにこにこ笑いながら佇んでいた。
「…和葉様…」
和葉は、学校帰りなのか濃紺のブレザーに白いシャツ、臙脂色のボウタイ、膝丈の半ズボン、濃紺のハイソックスに黒い革靴という制服姿であった。
和葉は11歳になった。
名門星南学院の初等科に通っている。

琥珀色の艶やかな髪、琥珀色の大きな瞳、白い肌は瑞葉と同じだが、活発な和葉はその頬は健康的な薄桃色に染まっている。
すらりとした長身で、小さな形の良い頭に長い手足と子どもながら日本人離れしたスタイルをしている。


貌立ちは、余り瑞葉に似ていない。
瑞葉は、玻璃で作られたような繊細で儚げな美しさだが、和葉は明るく華やかな美貌であった。
学業も大変優秀だが、和葉はスポーツ全般に秀でていた。
馬術、テニス、クリケット、スキー、水泳…。
苦手なものはないほどに闊達な少年だ。

この美しく文武両道に優れた華やかな孫を、当然乍ら薫子は溺愛していた。
まだ十一歳だというのに、茶会や夜会には必ず和葉を伴いたがるのだ。

見目麗しく利発で陽気な和葉は、幼いながらも人を惹きつけるオーラのようなものが備わっていた。
行く先々で和葉は注目の的であった。
そして人々は挙って和葉と懇意になりたがった。
これらの様は、薫子の自尊心を大いに満足させた。

「お帰りなさいませ、和葉様」
慇懃に挨拶をする八雲に、和葉はその腕にぶら下がるように甘える。
「ただいま。…ねえ、どうして八雲は僕を迎えてくれないの?八雲は執事になったんだから、僕の出迎えをしてくれてもいいのに」

八雲は、昨年老齢を理由に引退した叔父に代わり、執事に昇格した。
そのことに、八雲はぎりぎりまで固辞した。
職務が重くなると、瑞葉の世話が疎かになるのを恐れたのだ。
しかし、篠宮家全員…特に薫子の指示で受けざるを得なくなった。
薫子は、社交界でも密かに噂されるほどに美しく優雅で品格のある八雲を、執事として目立つ立場に置き誇示したがったのだ。

仕方なく、八雲は執事になる条件をひとつだけ示した。
それは、どの職務より瑞葉の世話を優先させることだ。
八雲は、他の使用人が瑞葉の世話をすることを極端に嫌ったからだ。




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